カツマ

サンタ・サングレ/聖なる血のカツマのレビュー・感想・評価

3.9
本日はクリスマスイヴということでサンタ映画を。え?サンタ違い?
(すみません、この冒頭はCMだと思ってください)

鮮血に染まるトラウマ、悲劇のフラッシュバックが脳裏に張り付いた少年時代と、母と一体化したかのような大人時代。悲しくもロマンチックに。振り切れた愛は狂気となって感情は血のようにドバドバと吹き出して止まらなくなる。
ホドロフスキーが長年の沈黙を破った長編4作目。あらすじのカオスに怯みそうになるも、実は彼の監督作品の中で最も分かりやすいと思われる。残酷だが美しいカットはもがき苦しむ愛への渇望を形にした。アート性とストーリー性を上手く融合させ、ホドロフスキーがアート作品ではなく、映画作品を創造した瞬間と言えるかもしれない。

サーカス団の両親のもとに生まれ、団員たちと共に育った少年フェニックス。彼の父親はサーカス団のダンサーと浮気するふしだらな男。母親はサーカスの傍ら両腕を亡くした少女を崇めるカルト宗教団体に入れ込んでいた。激情的な母はサーカスの最中に客席の隅に夫の浮気現場を目撃。激しい怒りに駆られた彼女は夫の股間に硫酸をぶちまけるも、逆にナイフを持った夫に両腕を切断されてしまう。自らの妻を手にかけた後、夫もまた自死する道を選んだ。
一度に両親を亡くしたフェニックスは精神を病んでしまい、そのまま大人になった。だが、彼の前に両腕を失った母親が再び現れる!フェニックスは母と共に自らのサーカス団を作ることになるのだが・・。

どう考えてもストーリーがカオスである。両腕を失った母親が再び現れる、という設定はもはやホラーだ。段々現実と幻の境目が見えなくなっていき、あまりホドロフスキーらしくない分かりやすいラストシーンには彼の新たな一面を見た気がする。
この映画のポイントは血の描き方だと思う。死の間際の慟哭の一瞬をドラスティックなまでの迫真で描き切り、鮮血のアートを上手く物語に溶け込ませた。
ストーリーはともかくホドロフスキービギナーの人にもオススメできる?作品かもしれないです(笑)
カツマ

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