140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ゾンビランドの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ゾンビランド(2009年製作の映画)
4.3
【世界の終わりとハートフルワンダーランド】

今となっては古くさい“疑似家族モノ“なのだが、公開当時に見ていたら号泣していただろう。すべからく私は陰キャなわけでボッチスキルばかりランクを上げて生きてしまったので刺さるポイントはとにかく刺さる。まだ若き日のジェシー・アイゼンバーグ、ようは「ソーシャルネットワーク」でザッカーバーグを演じる前の彼だからこそ放てる陰の熱量が堪らない。映画にヤンチャ成分を与えるウディ・ハレルソンの“オヤジ“っぷりは理想的。トゥインキーなる甘食を大好物とするあたりツンデレ性が抜群。可愛すぎるし男前。そしてエマ・ストーンのブレイク前のライブハウス女なメイクと質感も愛おしい。「リトルミスサンシャイン」のアビゲイル・ブレスリンも適所適役な娘感。

ルーベンス・フレイシャー作品は「ヴェノム」のみ鑑賞だが、彼のキャラ萌え演出は抜群で、たとえ世界がゾンビで滅び行くともそのバッドラックにグッドと言える根の部分の強さを感じる。

疑似家族モノとしてとにかく秀逸で、ツンデレファミリーモノとしても抜きに出る。後に「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー」でも見受けられるように最初こそ破綻の危うさがありありと感じられるが、過去の痛みを分かち合う中で“ひとつ“になっていく様は泣ける。

主人亡き豪邸で人生ゲームを楽しむシーンは、私の映画関係の中で「最高の人生ゲーム楽しむシーン」賞を受賞。ダンスパーティーで選ばれなかった夢見がち青年への救済、疑似娘にハンティングのコツを教えるシーン。じんわりと優しくポストアポカリプトを照らす。

クライマックスの遊園地のシーンは、ベタベタな手法なのだが、自己犠牲の覚悟やトラウマと向き合うこと、劇中に何度もヴィジュアル的に教えられる生き残るためのルールと対に女性を助けてヒーローになり距離がゼロへと導かれる導線はすこぶる上がる。

今は帝国が支配している。夢の国と自らを謳う帝国に。ゾンビウィルスのように蔓延する帝国の正しさに精神的なアポカリプトが到来するのならば、私のような陰キャは疲弊していくことだろう。しかしながら彼らのような“生き方“が可能性として呈示されるならば、それはまだ生きる価値を後押しさせてくれるクスリのようやモノなのである。

そして最後に
言わせて欲しい
これは私にとって
ベスト・オブ・エマ・ストーンだ!