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闇の列車、光の旅のkuuのレビュー・感想・評価

闇の列車、光の旅(2009年製作の映画)
3.8
『闇の列車、光の旅』
映倫区分PG12.
原題Sin Nombre.
製作年2009年。上映時間96分。

日系米国人のキャリー・ジョージ・フクナガ監督が移民たちの現実を描いた墨西哥(メキシコ)・米国産人間ドラマ。

ホンジュラス出身の少女サイラは、父と叔父とともに移民たちでひしめく列車でアメリカを目指し旅立つ。
道中、メキシコの強盗集団に襲われたサイラは、彼らの一味である青年カスペルに命を救われる。
その後、サイラは裏切り者として組織から追われるカスペルと行動を共にし、国境を目指すが。。。

米国にゃさまざまなルートから、不法移民が流れ込むん。
加奈陀(カナダ)経由やったり墨西哥(メキシコ)経由あるいは フロリダ沖経由。
多くは貧困地域から『希望の国』『約束の地』米国を目指して、ブローカー
や闇の商人を頼りに陸路、海路の危険な旅を続けてやってくる。
何も遠い米国の話だけではなく、横路にそれるけど、日本でも2000年代初頭以降、中国の経済発展にともない中国人の密入国は激減していったとは云え
蛇頭経由で日本に夢見てコンテナにすし詰めになった中国人たちが、暑さや病気で大量に死んでいるのが発見されたり、密入国者による窃盗などの犯罪、蛇頭絡みの事件のニュースが頻繁に報じられていたことがある。
それだけ日本と中国の間の経済格差が大きかったちゅうことかな。
あの時代クソたちとの付き合いがあった小生が聞いたのでは、蛇頭に密航の手引きを頼むと、だいたい200万円の手数料を取られてたらしい。
前金として100万円、密航が成功したらさらに100万円。
せや、当時の中国で200万円と言ったら都会で10年、田舎なら20年は楽に暮らせたほどのゼニやし、密航者たちは、親戚中からゼニをかき集めて日本を目指した。
日本で数千万稼いで国に帰れば、大きな家が建ち、その後数十年間は安泰の暮らしを送ることができる。
当時の貧しい中国人にとっては、命の危険を冒してでも密入国をはかる価値があったんやと思う。
今は中国に出稼ぎに行く日本人もいるって聞くのは笑えるようで笑えない話やけど。
兎に角、余談がすぎましたが、今作品は蛇頭経由の米国への密入国(ベトナムやタイ)は未だに減らないと思う。
これは、蛇頭は関係ないが🙇‍♂️。
ラテンアメリカには貧富の重層構造がある。
一握りの富裕層と薄い中間層、ほんで多くの貧困層や。
さらに米国人が墨西哥(メキシコ)人を差別するように、メキシコ人は中南米人を差別する。
貧しい中米人は飛行機のチケットやパスポートの取得など、正規の手続きを踏む経済的余裕はないさかい、違法な手段で米国を目指す。
なんで米国かといえば、米国じゃ無条件で豊かな生活を送れると楽観視したり、幻想を抱いているわけじゃなく、ほかに選択肢がないからやと思う。
少しでもよい生活を求めるなら、北を目指すしかないのやろうなぁ。
日本を目指して密航してた過去の中国人とはちょっと毛並みは違うかな。
『光の旅』(米国へ望む)てのは一条の光を指すしかない。
『光の旅』てのは一条の光を求める旅なんやろな。 
地球温暖化で農産物が打撃を受けると墨西哥からの移住者がますます増えると予測されてる。
キャリー・ジョージ・フクナガ監督は、刑務所で服役中の不法移民を運ぶギャングのメンバーや、事故や怪我で国境を越えられなかった多くの奴らに会い、かつ実際に貨物列車の屋根によじ登って旅をするなどの経験を重ねて、シナリオを書いて映画化したそう。
ギャングたちの描写もリアルやし、カスペルの背中のタトゥーや顔中タトゥーのリルマゴ、鉄の掟、 凶暴性。 米国、中南米には5万人から10万人のギャング(その多くは少年)がいるといわれとる。
武器や麻薬の密輸、商店からのみかじめ料、不法入国の仲介料などが主な収入源。
映画のラストの明るい日差しの中の白っぽい無機質な都市風景は、サイラの未来を象徴してるみたいで、サイラは進むほかはない。
監督はこのデビュー作で2009年サンダンス映画祭監督賞 撮影監督賞を受賞している。
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