カツマ

28週後...のカツマのレビュー・感想・評価

28週後...(2007年製作の映画)
3.7
爆炎に消える地獄絵図、愛も命も焼き尽くす狂乱のカオスが迸る『28日後』恐怖の続編!少しずつ積み上げてきた積み木が何かの拍子に跡形もなく崩壊するかのように、身勝手な愛の交配(または荒廃)が、夢も希望も木っ端微塵に打ち砕く。そこはこの世とは思えぬ地獄の底の底。ヒエロニムス・ボスの絵画のように人間は塵のように蠢いていた。

ダニー・ボイルによるゾンビ映画『28日後』の正統なる続編ではあるが、監督、キャストがすべて交替。キリアンやナオミ・ハリスが演じていたキャラのその後は描かれず、徐々に復興しつつあるイギリス国内が再びゾンビウィルスという名の業火に焼き尽くされる物語となっている。ダニー・ボイルは製作総指揮にまわっているとはいえ、『28日後』よりも遥かにヘヴィなバイオレンス描写が炸裂し、よりゾンビ映画らしい容赦のない鮮血のカオスが画面を支配する。

〜あらすじ〜

ゾンビウィルスが爆発的に拡大し、人々が次々とゾンビ化していく中、ドンと妻のアリスは老夫妻の家に他数人と共に何とか逃げ延びていた。だが、ついにはその家もゾンビたちに突破され、ドンは命からがら逃走するも、アリスはゾンビたちの中へと消えた。そう、ドンは愛する妻を見捨てて逃げ続けた。
そして28週後、一度はゾンビウィルスに侵されたイギリスは米軍らの尽力により徐々に復興しつつあった。生き残ったドンの二人の子供たち、タミーとアンディも旅行先のスペインから帰国し、ようやく故郷の地を踏むことができた。そこで二人はドンから母アリスが感染し、死んだことを告げられ、大きなショックを受ける。母親の写真だけでも手元に残しておきたい二人は、荒れ果てたかつての実家に忍び込むと、何とそこには死んだはずの母アリスがいた!アリスは奇跡的にゾンビウィルスに感染しない抗体を持っており、その調査のため医療施設へと移送されたが、妻の前から逃げ去ったことに負い目を感じていたドンは再び彼女に会おうと医療施設へと忍び込み・・。

〜見どころと感想〜

何も起こるはずの無かった復興の最中、子供たちの行動と、その両親の迷惑な行為で全てが崩壊。まさに感染は人間の罪悪感と憎しみが生んだ必然の帰結でもあった。『28日後』のスタイリッシュなアート感覚から大きく舵を切り、ショック描写、ホラーテイストが増大。監禁されている人間たちがゾンビに襲われるシーン、爆破シーン、ヘリコプターのシーンなど、人がゴミのように塵と化す狂喜乱舞の宴がてんこ盛りとなっている。

キャストはかなり豪華で、主要キャストにロバート・カーライル、ジェレミー・レナー、ローズ・バーンらを配し、子役にはまだ10代の頃のイモージェン・ブーツも出演と、配役面での見どころも多い。特にホーク・アイさながらの軍人を演じるジェレミー・レナーの存在感は圧倒的で、悲劇が増殖するこの物語に少しの希望を繋ぐ役割を果たしている。
この後、『28ヶ月後』が作られ3部作になるはずだったこのシリーズだが、今のところは動き無し。果たして続編はあるのか?見てみたいような見てみたくないような(笑)その時は再びダニー・ボイルに監督してもらいたいところですね。

〜あとがき〜

『28日後』は2度鑑賞がありますが、この続編は初でした。前作と同じ雰囲気で入ると、まさかのスプラッター要素のフルスロットルにギャップを喰らい、100%純正のゾンビ映画として生まれ変わっていましたね。
ただ、グロいシーンが増えた以外はストーリーもキャストも面白く、続編としてはアリかなと思いました。次に繋がるストーリーでもあったので、何とか時間がかかっても落とし所を見つけてほしいですね。キリアン演じるジムのその後も気になるところですので(笑)
カツマ

カツマ