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オール・アバウト・マイ・マザーのRのレビュー・感想・評価

5.0
素晴らしすぎる!!! こんな素晴らしい映画、一生に一本出会えるかどうか。めちゃくちゃ久しぶりに8回目を見ましたが、涙ボロボロ。映画史上最高の女性賛歌であり、人間賛歌であり、全世界の女性、なかんずく日本の女性に是非とも見てもらいたい一作。臓器移植コーディネーターのマヌエラは、物書きを目指す息子エステバンの17歳の誕生日に、『欲望という名の電車』の舞台劇に連れて行ってあげる。それは彼女が若い頃に演じたことのある劇であり、その劇団でエステバンの父に出会ったのだ。劇の帰り、僕の人生に欠けている半分、不在の父について、ちゃんと僕に話してくれと頼まれ、分かった、と答えるマヌエラ。が、舞台後スター女優のサインを求めて車を追いかけて行ったエステバンは、後ろから来た車にはねられ絶命。そして皮肉なことに、エステバンの心臓は移植され、見知らぬ男の命が救われる…。息子を腹に宿し夫から逃げたマドリード。その17年後、夫を探しにマドリードへ戻って行く。何というドラマチックさ! 電車の中からマドリードへ大きく移動するこのシーンは音楽も相まって涙涙。美し過ぎてしびれます。そして、懐かしきマドリードで出会うペニス付きの売女アグラード、彼女の友人の修道女ローサ、誕生日の事故の大女優ウマ。マヌエラが彼女たちと結んでいく人間関係が、アルモドバル独特の滑らかで目まぐるしく、ドライでありながらしみじみと心に沁む、人情芸術としか言い様のない極上の語り口で描かれていく。アグラードは上記の通りやし、尼のローサはロラというおっぱいつきの男とエッチして子どもできちゃってるし、ウマには麻薬中毒の彼女がいる、というキャラ濃すぎな女たちなのだが、みんなそれぞれに弱いところ、強いところ、欠点、美点があり、どこまでも人間くさくて愛らしい、最高のキャラクター。基本みんな何らかの重い問題を抱えてて、その上さらに問題が降りかかってますます大変になるんやけど、それでも押しつぶされることなく人生を楽しもうとしてるし、ヘビーなシーンのあとは、必ずアグラードが楽しい雰囲気でムードを持ち上げる作りになってて、最初から最後まで、悲しみと喜びと楽しさと感動がずっと心を満たしてくれる。前半からずっと全編涙が止まらないのは、何度も見過ぎによる症状なのかもしれないが笑 この最高の4人が一堂に会する真昼の飲み会シーンは、意味深かつアホらしいセリフの応酬がめちゃくちゃ面白く、爆笑やし、多幸感満載やし、後半、ふたつのロラとの再会シーンはもー涙とまらんかったよー。むちゃくちゃな奴なのによぉ、どんだけ幸せなヤツよ。「女は寛容なのよ。美徳だわ」「女は愚かよ。みな潜在的にレズビアンだし」のやりとりのごとき主人公たちの女の愛が、全編を通してものすごく感動的なのです。僕個人としては、日本の女性たちも、ありのままに、お互いを思いやり、労わり合える、この映画の女たちのような最高の友情を築けるようになってほしいと、心から祈ってます。いまの日本人女性同士の関係は砂漠すぎる。このままではあまりにもかわいそうだ。ちなみに、今回見るときは、直接的な関連作『イブの総て』と『欲望という名の電車』を見てから見たので、映画の面白さが2倍増しに感じられた。もちろん見てなくてもぜんぜん問題なく楽しめるけどね! ぜんぜん! あと、アルベルトイグレシアスの音楽がムードたっぷり、情感たっぷりで、ヤバすぎっす! そして、いろんな哀しみをくぐり抜けたあとで、美しく深い深い余韻を残す、最高のエンディング!!! 全身に愛が染み渡って身体中がジンジン!!! 終わってほしくない! もっと見たい、見ていたい!!! 女の持つもろさ、可笑しさ、たくましさ、哀しみ!!! たまらん!!! 人生の一本!!! 見れば見るほど沁みが増しますので是非三度以上! 僕の一番好きなアルモドバルの最高傑作はコレ!!! ベストムービー更新っす!
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