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ヒストリー・オブ・バイオレンスのbackpackerのレビュー・感想・評価

4.0
冒頭2分でむごさを叩きつける、初速十分なバイオレンスムービー。
ヴィゴ・モーテンセンが、役にピッタリでした。
息をして、水を飲むように、なんの感慨も抱ず、殺す。
さながら的当てでもしているような、躊躇逡巡一切なしの殺し。
こいつらが話の軸か?と思っていたら一転、怖い夢を見た少女を宥める優しい家族に切り替わります。
主人公トムはダイナーのボス、妻は弁護士、息子は優秀だが学校で苛められており、娘はまだまだ幼い。

そんな一家ののんびりとした空間も、暗い画面や冒頭から保たれたムードが、安寧を許しません。
冒頭の二人組がダイナーにやってきて、従業員を殺そうとしたとき、トムは驚くべき身のこなしでコーヒーポットを頭に叩きつける。
身を翻し銃を奪うと、瞬く間に2人目を射殺。そして滑らかにもう1人の頭をぶち抜く。
しかし、一夜にしてヒーローになったトムを待っていたのは、過去に置いてきた唾棄すべき忌まわしいしがらみで……。

もー、素晴らしいバイオレンス。
捨てたはずの血みどろの過去が、彼を逃さずまとわりつくのがいいです。
トムとして幸せに生きたいのに、徐々にぎくしゃくとする家族の仲。
ジョーイとして生きた残虐な歴史を清算できないもどかしさ。
息子に突如見えた暴力の片鱗。
んもー、素晴らしいバイオレンス。

ラストシーンの静まり返った空間もたまりませんね。
良質でヘビーなバイオレンスムービーの傑作でした。
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