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スタンドアップのMOCOのレビュー・感想・評価

スタンドアップ(2005年製作の映画)
4.0
「私はグローリー・ドッジ
まだ死んではいません。
 ジョージー・エイムズに同意します」


 1984年全米初となるセクハラに対する集団訴訟の実話に基づいた映画です。

 ジョージー(シャーリーズ・セロン)は、夫の暴力から逃れるため息子サミーと娘カレンを連れて両親の暮らすミネソタ北部の町へ戻ります。
 学生時代の友人グローリー(フランシス・マクドーマンド)からお金を稼ぐなら鉱山で働くしかないと聞かされ父親の反対を押し切って父親の働く鉱山で働くことにします。グローリーは鉱山内で大きなトラックを運転する唯一の女性組合役員でした。
 グローリーからは相当な覚悟が必要と聞かされてはいたものの採用前には妊娠していてはいけないと性器を触診されます。
 15人の女性従業員はランチボックスには男性の性器を形どった玩具を入れられたり、胸を触られたり、押し倒されたり、卑猥な言葉をかけられたり罵倒されたり、ロッカーの着替えに精液をかけられたり・・・ありとあらゆる嫌がらせを受けているのです。
  
 ジョージーは作業場で高校時代の恋人ボビーにキスを求められ断った事から暴行を受けるのですが誰一人まともに話を聞いてくれないため我慢も限界に達し退社して黙認する会社を訴えます。

 ジョージーは16才で父親のわからない子供(サミー)を産んでいるため町中に「アバズレ」と噂され父親からは厄介者扱いされていたのですが、訴訟の話でさらに怒り狂う父親に呆れて母親は家出してしまいます。

 母親の行動をきっかけに父と和解したものの、集団訴訟に最低限必要とされた3人の原告は、解雇を恐れて全く集まりません。 
 会社は裁判を有利に進めるため、ジョージーの人格を争点にしようとボビーに学生時代の教師との肉体関係を暴露させ・・・、やがて明らかにされていくサミーの父親・・・。

 弁護士ビル・ホワイト(ウディ・ハレルソン)の挑発に乗せられ語り始めるボビー、そして閉廷直前、今は病気で口もきけなくなってしまったグローリーの気持ちを夫が代弁します。
「私はグローリー・ドッジ
まだ死んではいません・・・」

あと一人・・・
あと一人勇気をもって立ち上がれば集団訴訟が成立するのですが・・・

 2005年アメリカ公開映画ですが、2017年『スリー・ビルボード』で共演するフランシス・マクドーマンドとウディ・ハレルソンの共演も見ものです。フランシス・マクドーマンドはやはり上手い・・・。

 金太郎飴の如く映画出演を果たすシャーリーズ・セロンは、いくつになっても美しい顔立ちだと思っているのですが、数少ない笑顔のシーンがあり、この頃は可愛らしさも兼ね備えています。原題は「North Country」シャーリーズ・セロンには珍しい社会派映画、静かに進行して見応えがあります。

「女性の鉱山労働者は勝訴し
和解金とよりおおきなものを
会社から勝ち取った
性的迫害から女性を守る規定である
北の町から世界に広がった勝利の第一歩である」・・・と締め括られあっという間に解決する印象ですが、現実は13年もの歳月をかけて1997年に勝訴しています。裁判が始まった1984年は40年にも満たない、凄く近い昔の話です。

「セクシャル・ハラスメント」という言葉が認知されることになった裁判です。
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