YYamada

スリーパーズのYYamadaのレビュー・感想・評価

スリーパーズ(1996年製作の映画)
3.6
【法廷映画のススメ】
『スリーパーズ』(1996年)
〈フィクション(1981年 / ニューヨーク) 〉

◆法廷の争点
NYのチンピラ2人にかけられた、
少年院の元看守殺害の容疑について
・元看守の人物像
・容疑者2人の犯行時のアリバイ

〈見処〉
①オールスターキャストが贈る、
 もと少年達の積年の復習劇
・『スリーパーズ』は、1996年製作のサスペンス映画。タイトルの『スリーパーズ』は「少年院上がりの人」を意味。
・舞台は1967年のニューヨーク。労働者階級に生まれた幼馴染の少年4人ロレンツォ、マイケル、トミー、ジョンは、暇潰しの悪戯によって老人に重傷を負わせてしまう。
・4人は少年院に送られ、看守長のノークス(ケヴィン・ベーコン)をリーダーとした34人の看守によって、性的暴行を加えられる地獄の日々を過ごす。
・刑期を終え、4人が心に傷を負ったままそれぞれの人生を送っていた1981年。ジョンとトミーが行きつけのBARで、年老いたノークスに遭遇。蓋をしていた過去の傷が再び開いたジョンとトミーは、怒りに任せノークスを射殺する…。
・本作は、少年院で虐待を受けた若者たちによる復讐劇をロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン、ブラッド・ピット、
ケヴィン・ベーコン、ジェイソン・パトリック、ブラッド・レンブロ等豪華キャストで描く社会派ドラマ。

②実話か創作か?
・本作は1995年に発刊されたロレンツォ・カルカテラの同名小説を原作としたもの。この原作では『ロレンツォ自身が少年院で体験した事実と、その復讐を綴った実話である』ことから瞬く間にベストセラーとなり、一気に翌年の映画化につながった。
・しかしながら、看守殺害の裁は事実無根であると裁判所と検事局は声明を表明。また作者のロレンツォは、少年院へ行っていないことも判明している。
・本作では、エンドロールの前に、物語が事実でないとする裁判所と検事局、実話と主張する作者の双方の見解を表示させ、公共機関による事実隠蔽を想起させる構成となっている。
・果たして、(『レインマン』のみの)名匠バリー・レヴィンソンによる演出は、どこまで事実認知したうえのものだったのだろうか?

③結び…本作の見処は?
◎: 『スタンド・バイ・ミー』+『ゴッドファーザー』+『告発』をイメージさせる重厚な叙事詩は、147分に及ぶ長い上映時間を退屈せずに鑑賞することが出来る。バリー・レヴィンソンによる演出とジョン・ウィリアムズの楽曲の相性も良い。
○: 『告発』(1995)にて、死刑囚を演じたケヴィン・ベーコンが、一転して非道な看守を演じている。わずかな登場時間に対し、強烈なインパクトを残す。
▲: 「事実無根」を前提に本作を鑑賞すると、裁判の進行と関係のない殺害された看守の人物像の深堀や、拙いアリバイの構成など、ブラッド・ピット扮する検事の非現実的な振る舞いが目につく。法廷ドラマとしては、ドラマ性に欠ける気がする。
▲: ダスティン・ホフマンやロバート・デ・ニーロらによる夢の共演に対するインパクトは薄い。証人席に向かうデニーロの葛藤をもっと見たかった。

公開当時に「実話」と認識し、劇場鑑賞した本作。「名作」相当の4点前後のレビュースコアをイメージして再鑑賞したが、色々調べてみると非現実的な創作話のようで…再鑑賞しなければ良かったかも!?
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