クシーくん

迷探偵シャーロック・ホームズ/最後の冒険のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

名探偵シャーロック・ホームズの正体はアホでスケベで呑んだくれの三文役者で、脇に控えしワトソン博士こそが天才的頭脳の持ち主だった!...という、ありそうでなかったパロディ映画。

元役者(悲劇を喜劇に変えたと評されてはいるものの)なだけあってハッタリだけは一人前のホームズ。
本名をレジナルド・キンケイドといい貧民窟にいた所を、素性を隠したいワトソン博士に拾われて”名探偵“を演じている。ところが余りにも有名になりすぎたために調子に乗るキンケイド。その増長とバカさ加減に我慢の限界が来たワトソン博士とついに関係が決裂して...という筋。

正体を知っているか否かで、2人に対する態度が真逆なのが一々笑える。ホームズ=キンケイドを知るハドソン夫人やベイカー街少年探偵団からは軽蔑され、完全に雑な扱いを受ける一方、ワトソン博士の方でもホームズがいないなら話にならぬと依頼人始め、レストレイド警部からも相手にされずに歯痒い思いをする。どちらが欠けても名探偵は登場しないのだ。

シャーロキアンないし原作のファンなら「もしこれが事実だった」らと仮定して、原作を読み返すとまた違った楽しみ方が出来るかもしれない。それでなくても本作には原典やパスティーシュからのパロディも多い。

音楽はヘンリー・マンシーニが担当しているだけあって、作風に適したBritish light classicsな雰囲気が堪らない。

日本でも英国紳士の一イメージとして知られるホームズにマイケル・ケインを持ってきたのがまた上手い。上品下品が見事に混在したホームズをスマートに演じきっている。ベン・キングスレーの知的で神経質なワトソンとの組み合わせは最高のコンビ。

レジナルドは作中何度も致命的なミスをやらかし、周囲を危機に陥れるどうしようもないバカなんだけど、バカなりに一生懸命相棒のワトソンを助けようと努める。彼が真にシャーロック・ホームズとして覚醒するシーンはシャーロキアンでも満足すること請け合いだ。

クライマックスでホームズがやらかす「うっかり」に大爆笑。いや〜映画観ててこんなに笑ったの久しぶり。マイケル・ケインの名演技の賜物。

結末も実に爽やか。芝居の幕はまだ降りない。これが美しい友情の始まりといった所か。"right?...holmes." "right you are...watson"
クシーくん

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