茜

第9地区の茜のレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
4.0
ストレートなSF映画かと思っていたら、ドキュメンタリータッチで話が進んだり、
宇宙船が故障して星に帰れないエイリアン達が暮らす地区に立ち退き命令が下るという設定も風変りで面白い。

ストーリーも面白いし、爆破や銃撃といったアクションシーンも楽しくて、テンポよく飽きずに楽しめる映画なのですが、
人間のエイリアン達に対する差別や見下した発言・行動が至るところに盛り込まれているせいか、
観ていてどうにも心の中に居心地の悪い嫌な気持ちを感じてしまうところもいっぱいあった。
後で調べてみると、この映画は南アフリカで起こったアパルトヘイト政策を元にしているという事を知って妙に納得。
この話がもし白人と黒人の人間同士で行われていた映画だったらと考えると、重た過ぎて私は絶対観ていなかっただろうなと思うから、
差別問題を人間とエイリアンのSF映画として表現する事で、間口を広くして鑑賞のハードルを下げているのが凄いなと感じた。

主人公のヴィカスも基本的にクズ野郎で、エイリアンの事は終始バカにしてエビよばわりだし、彼らの卵を燃やしてバカ笑いしてたのも嫌な感じだったし、
クリストファーに対しても利用しようとしているのか、心の中では彼の事を見下してるのかなって思う場面も多々あった。
クリストファーに対して「坊やのことを考えろ!」って叫んだりと、家族愛だけは強い男っていうのは分かるけど、基本的にはエリート志向の嫌な奴というイメージ。
結局は順調だったクリストファーの計画にヴィカスが横やり入れて引っ掻き回してたんだよなぁと思うと、
ラストでちょっとかっこいい風に映ってるヴィカスに「お前が調子に乗ったせいやぞ!」って言ってやりたくなった(笑)
でもそういう主人公が今度は逆に追われる立場となり、全く異なる人生を歩むというところも、皮肉が効いていて好きなお話でした。
茜