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チョコレートのRのレビュー・感想・評価

チョコレート(2001年製作の映画)
4.4
白人のおっさんと黒人美女のサラッとさわやかなラブストーリーくらいに勝手に思ってたら、全然想像と違う映画でびっくりした。やっぱ何でも見てみないとあかんね。重くて悲しくて殺伐としてるけど、同時に透明感もあってとてもきれいな映画だった。全編を流れてる空気感のある切ない音楽がとてもよかった。主人公のハンクは息子といっしょに南部の刑務所の看守をしてて、ひとりで歩けなくなった病気のオヤジを世話しながら暮らしてる。オヤジの黒人嫌悪とマッチョ思想をハンクはしっかり受け継いでて、ところがハンクの息子は2人と正反対の優しい男で、オヤジたちふたりはこれをダメなやつだと思ってる。そんな息子がある日突然、彼らの目の前で自殺する。一方、もう1人の主人公レティーシアはお金ないのに酒飲みな黒人女性で、息子を愛しながらもデブ! 甘いもんばっか食うな!としばき回してたりする。ある夜、息子が車にひかれ路上で助けを求めて叫んでるレティーシアを目に留めたハンクは、ふたりを車に乗せて病院に駆けつけるのだが……やがて、ふたりは精神的、肉体的に強く強くお互いを求め始める。じつは彼らを更にヘビーな形で結びつけてるものがあって、それは、レティシアの元旦那の死刑を執行したのがハンクだという偶然。この事実は見てる僕らしか知らない。それがいつ露見してしまうのか。ただ、ちょっと映画全体のシリアスな雰囲気の割に、セックス激しすぎませんかね笑 思わず笑ってしまいますよ。叩きつけるようなパンパン音が何度も鳴り響く。ハンクを演じるのがビリーボブソーントンなのが一層その面白さを強調する。レティシア演じるハルベリーは生活に疲れ切った粗野な女とは思えない美人で、抜群のスタイル、潤いのあるフルヌードで貪るようにぶち込まれてる。何とも言えないポルノ的可笑しさに笑ってしまいます。ストーリーの流れ的に、人間は何歳になっても差別の心を乗り越えられるみたいな思想的な感じにならず、性愛への渇望という緊急な要請から、自然とそこが問題でなくなる、といったより本能的な変化が起こるのが面白い。まぁお互いの息子の件もありながらやけどね。とはいえ、まだこのお話にはあとふた山もありまして、それを超えたあとのラストシーンはマジ素晴らしかった、あの激情(の時点では荒れるの2回目なんでえーまたかよめんどくさ!と思ったけど)、あの迷い、あの小さな決断、アレを口に運ぶシーンの演出、あの転調、最後のふた言、あの暮石、からの後ろ姿、夜、空、あーーーーーーーーー涙がーーーーーーーーーー受け取り方を見る人に委ねるおおきな余白を残しためちゃくちゃよい終わり方!!! 死刑執行シーンや自殺シーンなどのショッキングなシーンを、ドラマ的オブラートに包むことなく、素っ気ないほど有り体に描いてあったりするので結構ビックリしますが、そういうのが苦手な人もぜったい最後はうおおおおおおとなるはずです。どうせ適度にキレイでポップな映画なんでしょ、って思って見てない僕のような人にこそオススメしたい。しみじみといい映画でした。
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