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300 <スリーハンドレッド>のYYamadaのレビュー・感想・評価

3.6
【連続鑑賞のススメ】300①

◆連続鑑賞の理由
・上半身裸の容姿が似通い、
 連続鑑賞しないとキャラを忘れがち
・史実を押さえ、一気通貫で鑑賞したい

〈見処〉
①史実をベースとした大スペクタクル
・『300 〈スリーハンドレッド〉』は、人気コミックライターのフランク・ミラーの同名グラフィックノベルを原作とした、アクション映画。ザック・スナイダー監督の出世作でもある。
・舞台は紀元前480年、ギリシャの都市国家スパルタ。スパルタ国王レオニダス(ジェラルド・バトラー)のもとに、ペルシア帝国から使者が来訪、服従の証を示せと要求。
・レオニダスはこれを拒否し、使者を殺害するが、デルポイの神託とスパルタ評議会により、非戦の方針が決定。
・戦わずしてペルシア帝国の支配下に入ってしまう。レオニダスは「散歩」と称して300名の親衛隊を率い、ペルシア王クセルクセス率いる100万のペルシア軍を迎え撃つことになる…
・本作は、300名の屈強なスパルタ兵が地の利を生かして、ペルシャ軍を大いに苦しめた「テルモピュライの戦い」の史実をベースにした一大スペクタクル。「大阪の冬・夏の陣」の真田幸村が贔屓の日本人にとっては、好みのストーリーといえる。

②筋肉隆々の漢たち
・本作はフランク・ミラーのグラフィックノベルのテイストにあわせ、強い陰影が特徴的な描写となっている。
・ザック・スナイダーによるその演出は、大部分がスタジオ内のブルー・スクリーン撮影によるCG合成。
・そのため「スパルタ人たちの腹筋CG説」も噂されたが、制作関係者曰く「制作費を削るために鍛えるようにと指導していた」そうだ。
・主演のジェラルド・バトラーや本作で映画デビューとなったマイケル・ファスベンダーらの主要キャストに対して、専属インストラクターをつけて、筋肉を増量させた成果は、本作で証明されている。

③歴史ドラマの難しさ
・本作で描かれる「テルモピュライの戦い」は、紀元前443年頃にヘロドトスが記した『歴史』を唯一の出典としており、「史実」というよりも「伝説」といえる。
・本作で描かれる時代は、キリスト教やイスラム教が成立する前の時代。正しい時代考証は困難がつきまとう作業であろうが、
本作の敵軍であるペルシアの末裔となる、イラン政府は、本作に対してイラン人の先祖であるペルシア人を激しく冒涜しているとして激しく非難。
・本作の映画製作関係者は「この映画は、単にイラン人とスパルタ人の戦争物語を、史実と異なる形で語り、歴史を正確に伝えるものではない」と説明したそうだが(wikipedia調べ)、自らのルーツを『ロード・オブ・ザ・リング』のゴブリンさながらの醜い容姿で、一方的な「悪」と描く作品に対して、製作者と鑑賞者はどのように捉えれば良いのか…他国の歴史歪曲に苦しむ日本人にとっては、単なる娯楽作として鑑賞してはいけない。
・なお、本作のスパルタ国は「自由への戦い」を叫んでいるが、ペルシア戦争の遠因は、アテナイ(ギリシア小国家)のペルシア内政干渉によるものである。

④結び…本作の見処は?
○: 全編アニメのように陰影深い描写は、とにかくスタイリッシュで、カッコいい。
○:「ストップ&ゴー」ザック・スナイダーの演出が冴え渡る。当時は『マトリックス』みたいと思ったことを思い出す。
○: 筋肉隆々。ジェラルドバトラー「漢っぷり出発点」作品。
×: 史実をテーマに一方的なエンタメにしてはいけない。製作者と鑑賞者それぞれの倫理観を忘れてはならない。
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