茜

マイ・プライベート・アイダホの茜のレビュー・感想・評価

4.3
美しいロードムービーと、思わずくすっと笑ってしまうようなギャグテイスト、
そして何とも言えない虚無感が残るストーリーという、様々な要素の詰まった不思議な映画。
でもこの何とも言い難い余韻が意外と心地よかった。

若き日のキアヌ・リーヴス、そしてリヴァー・フェニックスの2人は勿論のこと、
登場する男娼が誰もかれも美青年ばかりで、そこがまた儚さを加速させる感じ。
リヴァー演じるマイクの側にはスコットをはじめ仲間たちやお客など、常に誰かしら人間に囲まれていて、
それでも彼から漂う孤独感や陰鬱感のようなものが、まさにこの物語を象徴しているようだった。
マイクに次々と降りかかる孤独は観ていて哀しくなるけれど、決して他の誰も責める事は出来ない。
結局のところ人間はいつも一人だし孤独なもので、生きて行くためには自分の足で歩いていかなければならない。
現実ってそういうものだよっていう言葉を投げかけられたような気がする。

ストーリーのみならず演出もなかなか味わい深くて、絶頂の瞬間に空からボロ小屋が落ちてくる映像を挟んだり、
ベッドシーンが静止画を組み合わせて作られているところとか独特な表現で面白かった。
あとマイクのお客が何かと変人だらけで、特に掃除に感じてしまうおじさんがおかしくてしょうがなかった。

実はリヴァー・フェニックスの事はこの映画を観るまではよく知らなくて、
23歳という若さで亡くなってしまった事や、どことなく陰のある雰囲気が魅力的な名優だった事などを知り、
何となくこの映画が彼に重なってしまう部分が多くて、ちょっとしんみりしてしまった。
茜