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ルパン三世 ルパンVS複製人間のbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
劇場版ルパン三世第1作
(ベネチア超特急はカウントせず)

「こうなったらもう、俄然暴力に訴えちゃうもんね」

コミカルさは維持しつつ、原作のシニカルでシリアスなハードボイルドルパン三世路線を大増幅しにして展開する、大人向けの娯楽大作です。
小さい頃は小難しいことまでわかリませんでしたが、歳を重ねて見直すことで、より深く理解することができました。


絞首台へと続く死の13階段、ルパン死刑執行、とっつぁん真相究明、そしてルパン復活。
このアバンタイトルが既に濃いですね。 そこから、胚への移植によるクローン製造過程を繰り出すOPは、一種ホラーの雰囲気を醸し出しており、狙う方向がまるで子ども向けではありません。
ルパン三世本来の大人向け路線でいくぞ!ということが、ヒシヒシ伝わってきます。


本作の敵は、自称神こと謎の男・マモー。
彼との戦いはスケールがデカく、ルパン一家も常に押され気味です。
どんな奴が相手でも、飄々と攻略していくことが多いルパン一家を、これ程苦しめ続けた敵は、非常に珍しい存在ですね。

絶滅した生き物のみならず、人類史における高名な偉人達のDNAから生み出したクローンによって、地球の記憶そのものを保管せんとするマモー。
彼の狙いは、永遠の生命。
自らを不死の存在とする為ならば、どんな犠牲も労力も厭わないという、超遠大な視点で計略を練ってきたこの男の、深い深い強欲が恐ろしい。

マモーは、一種のタナトフォビアに悩まされている存在であり、死と向き合うことを恐れているわけですが、メメント・モリとは程遠いですね。

それはさておき、このマモーが繰り出すあの手この手、その途方もない壮大さが凄いですね。
マモーの存在の他にも、世界一の金持ちであったり、天変地異を起こすために地下原発を爆破して大地震を起こしたり、世界を滅ぼす為の大量の核ミサイルを保有していたり……と、何でもかんでも規模がデカい!
マモーはルパン作品最凶の敵と言っても、過言ではないでしょう。


作品のキーとなるクローン技術。
クローン技術というテーマは、大抵の場合クローンのアイデンティティや彼らの苦悩に焦点を当てて描かれる作品が多いと感じています。

勿論、本作においても、ルパンのアイデンティティをクローンが揺るがしてくる(処刑されたルパンはオリジナルか?クローンか?)のですが、このようなアイデンティティ問題は本筋ではありません。
むしろ、永遠の命を求める超常的存在に対し、極普通の人間であるはずのルパンが、いかに常識外れのスペックを有しているかに光が当てられています。

超常的存在vs超人的存在、2人の天才の戦いに絞り込むことで、難解さ等は上手く隠して、不気味な世界観のエッセンスに落とし込む。なるほど、これなら娯楽性を高められますね。


永遠の生命という人類最大の夢を渇望する奇怪な巨悪との、頭脳・肉体フルスロットルのアクションアドベンチャー娯楽大作。
大人も子どもも楽しめる、むしろ大人に見てほしい映画です。
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