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黒蘭の女のRのレビュー・感想・評価

黒蘭の女(1938年製作の映画)
4.0
興味の湧かないタイトルの古い映画を見ていこうシリーズということで、今回はこの作品を選びました! コレはなかなかの当たりやった! 主人公は、1850年代アメリカ南部のルイジアナで裕福な生活を送っているお転婆娘ジュリー。彼女にはプレスというフィアンセがいて、ジュリーとは正反対の性格、保守的で誠実な銀行家。ジュリーはわがまま放題で、プレスが重大なミーティングをしてるときですら、無理やり会いに来させようとし、来なかったら自分から押しかけていく。うーわ。こういう人むりやわーと思っていたのだが、彼女は伝統とか慣習とかが大嫌いで、その点は、うんうん、分かる分かるその気持ち。ある夜、街の若い人々がみな集う舞踏会が催され、独身女性は白のドレスを着るのが習わしなのだが、プレスの猛反対を退けて、ジュリーは真っ赤なドレスで出ると言い張り、ブチギレたプレスは無言で彼女と舞踏会に行く。ここで僕はジュリーを大いに見直した。ボクも、くだらない文化など、どんどん棄ててしまえと思う方なので。いいやん、ジュリー……しかし、ドン引きの皆様方の真ん中でふたりが踊り始めると、波が引くように踊るのをやめていく皆さん、さすがにやり過ぎたと逆ドン引きし、帰らせてと嘆願するジュリー。いやいや、なに今更おじけづいてるねん! だったら最初からやるな! ウザ! そしたらプレスも、もう遅いと、とことんまでやる気に。しまいには、惨めでにっちもさっちもいかなくなってしまうジュリー。そして、パーティーの後、プレスに婚約破棄を言い渡される……当たり前の展開。わがままで一貫性のない人間ってほんま見ててイラつくわー、からの一年後、ニューオーリンズを離れ、北部で暮らしていたプレスがしばらくぶりにニューオーリンズに帰ってくることに。ショックで引きこもってたジュリーは、やっぱり私のために帰ってきたのね!と馬鹿ハッピーな思考回路なのだが、なんと、プレスは北部で結婚した妻を連れて帰ってきたのだ……ということでさぁさぁ大変!になっていくのですが、とにかく前半はジュリーのダメ人間ぷりが非常におもしろい。演じているのはベティデイヴィス。おばさん以降の姿しか見たことない女優さんなので、若いベティ、なんか逆に違和感ありました笑 が、小悪魔的でエゴイスティックなユニークな魅力があり、作品全体のクオリティが彼女の存在感でもってるようなもん、と言っても過言ではないのでは。あ、でも音楽も良かったな。そして、フィアンセのプレスを演じるのは、こちらもおじさんのイメージしかない正統派ヘンリーフォンダが、若い! 最初、声と喋り方がめちゃくちゃ有名な俳優を想起させるけど、誰やったかなことひと!ってなってた。二人とも歳とってからのほうがイケてるのがすごいですね。で、後半は、このどうしようもない馬鹿げたラブストーリーから、まさかこんなものが派生するとは、予想もしてなかった社会的テーマが加わってくる。ひとつが、のちに南北戦争へとつながっていく黒人奴隷制。この頃にはジュリーはすっかり一丁前の南部女性に転身していたため、南部の女としてのありようを北部からの女に見せつけ、マウントを取ろうとする。その一つが奴隷と彼女との関係を見せることなのだが、面白いのはディナーのテーブルで、北部からの女が黒人奴隷を解放すべき理由として挙げること。これは是非見て唖然としてください。ほんまにどいつもコイツも。いかに時代の流れに逆行することになろうとも、歴史はのちに必ず悪を明らかにすることを念頭において、ゼッタイに正義を貫かねばいけませんね。そして、もうひとつの社会的テーマが、まさに我々がここ最近経験したパンデミック。1938年製作の古い映画で、それよりさらにだいぶ昔の設定のお話なのに、なんだかものすごく身近なものに感じられるのが面白かった。ほんで、このテーマが、ジュリーのたわけたラブストーリーを、さらにますますたわけたものに高めてくれるのです!!! お楽しみに!!!
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