クレセント

インサイダーのクレセントのレビュー・感想・評価

インサイダー(1999年製作の映画)
4.8
観ていくうちに緊張するほどのめりこんだ。

単なるリーガルサスペンスとは違って徐々に深みに嵌(はま)っていった。

法治国家アメリカの複雑怪奇な病巣に真正面から突っ込んでいった作品だ。

民主主義はすべてにおいて法の支配下にある。ことの発端は巨大だが単純なものだった。ただ有害であることが許せないというだけのものだった。

勤務する企業の違法性に気づき、内部告発をしなければという気持ちだった。

しかし事態は徐々に複雑化していく。

内部告発者は大罪に問われる。会社との秘密保持契約違反に問われるからだ。告発者は罪人となり、一生莫大な借金と汚名に苦しむことになる。

しかし物語は独占報道を企むテレビ局プロデューサにも焦点を当てていく。

この彼も法務担当役員から不法干渉によるスポンサーからの契約違反や多額の賠償金支払いの可能性があり放送中止に追い込まれていく。

名代の番組司会者や報道局長らとの内部確執がおこり、離散する。

また告発者の過去が暴かれ、新聞社による中傷記事騒動へと発展していく。

そして物語はついに最大の新聞社へと移っていく。

徐々にすべての秘密が暴かれていく展開となるが、いやはやどちらを向いても違法性、不法疑いのため身動きが取れないもどかしさが残る。

全てを曖昧模糊(あいまいもこ)とすることが美徳である日本と比べ、守るも攻めるもここまでやるかという、この作品の強烈で衝撃的な展開は、実話だから成し得たもので、まさに最大法治国家を自認するアメリカの矛盾を暴きだし、ただただ監督のM.マンに脱帽せざるを得なかった。
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