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私は告白するのRのレビュー・感想・評価

私は告白する(1953年製作の映画)
4.6
これはめちゃめちゃ面白かった! カナダのケベックに暮らすローガン神父は、ある夜、教会で働く勤勉な夫婦の夫の方から、懺悔室で、私は告白する、私は強盗殺人をした、と告解を受ける。カトリックでは、懺悔室で打ち明けられた内容を絶対に誰にも告げてはならないという守秘義務がある。当然、ローガンもその秘密を胸に秘めるのだが、その殺人の嫌疑がローガンにかかってしまう。強盗殺害の推定時刻に法衣を着た男が殺人現場を離れていく様子が目撃されており、しかもその翌日、被害者と会う約束があったと、ローガンが殺人現場に姿を現したからだ。さて、こっから、ローガン神父の苦悩が始まる。守秘義務を貫かなければならぬ一方で、ローガンへの容疑がどんどん濃厚になっていく。その上さらに、ローガンとブロンドの美人妻の秘密の関係がどうやら事件に関連していることにも言及され始める。このままではヤバい。が、真実を話すこともできない。この苦悩をものすごい真摯さで演じるのが、スーパーイケメン、モンゴメリークリフト。瞳の奥以外に苦悩の様子をほとんど見せず、たえず毅然とした佇まいだが、少しずつ安定感を失っていく様子が見ごと。瞳に浮かぶ深いエモーションが強烈に印象に残る。陰影の深い映像もめちゃめちゃ美しく、ダークな緊張感がピンと張りつめていて、冷厳とも言うべき突き放した空気のなか、得意のユーモアやアイロニーを排して、鬱鬱とした重厚な心理サスペンスを、天才のわざで魅せるヒッチコック! すごい! しかも、カナダにおけるドイツ移民の苦しみや、宗教的戒律の不条理性、といった社会的なテーマ性をくっきりと浮かび上がらせた作品も、ヒッチコックにしてはめずらしくない。本人的にはまったく納得がいかなかった作品らしいが、そんなの見てるこっちには関係ない。やはり随所にヒッチコックスタンプが見られる、文句なしの傑作だと思う。ブルーレイ出てるみたいなので、是非ともブルーレイでも見てみたい。ただでさえすごい映像がもっと良く見えるのでしょう、最高やん。
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