たにたに

十二人の怒れる男のたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【感情で結論付けてはならない】2023年85本目

ある黒人の少年の実刑判決(死刑)を審議する12人の陪審員の男たち。
ほとんどが陪審員室のシーンで、まるで演劇を見ているかのような演技合戦を楽しむことができる。ところどころトイレに行くシーンが挟まれて、空間の切り替えを用いながら結末へと物語が進ませていくあたりが上手い。

早く終わらせてフットボール見に行きたいだの、仕事あるだので、11人が有罪を主張するものの、1人だけノットギルティーを持ち出す。
全員の意見が一致しなければならないため、侃侃諤諤と議論が交わされ、一人、二人と徐々に心変わりして最終的には全員が無罪を述べるようになるという筋書きだ。


並べられた証拠を疑い、鵜呑みにせず、冷静な判断で物事を見つめ直すかがいかに重要なのかを思い知らされる。
その証拠(電車越しに見た、口論する声を聞いた)というのを言葉で説明するのみで、一切回想シーンは出てこない。観客に想像させることによって、有罪を出した陪審員の感情を我々も追体験でき、最終的にはきっと黒人少年は無罪だと我々も結論づけてしまうように仕上げている。

映像の派手さは全くないけれど、この心情が揺さぶられる感覚はたまらない。


最後まで有罪を主張する陪審員3番。
息子とうまく行ってないことを、黒人少年と関連づけて考えてしまっている。要は感情論で物事を把握しているのだ。
人間心理を上手く利用した見事な作品です。
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