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GODZILLA ゴジラのbackpackerのレビュー・感想・評価

GODZILLA ゴジラ(1998年製作の映画)
3.0
◾︎ ゴジラシリーズ番外編

【作品情報】
公開日   :1998年7月11日(日本)
作品時間  :138分
監督    :ローランド・エメリッヒ
脚本    :ローランド・エメリッヒ、ディーン・デブリン
製作    :ディーン・デブリン
製作総指揮 :ローランド・エメリッヒ、ウテ・エメリッヒ、ウイリアム・フェイ
音楽    :デヴィッド・アーノルド
出演    :マシュー・プロデリック、ジャン・レノ、マリア・ピティロ、ハンク・アザリア、ほか

【作品概要】
ハリウッドの壊し屋こと西ドイツ生まれの名職人ローランド・エメリッヒ監督が、『スター・ゲイト』『インディペンデンス・デイ』の成功により監督就任を打診され製作した、ハリウッド版ゴジラ第1弾。2014年からのモンスターユニバースとは、2021年時点では接点なし。

本家日本のゴジラシリーズは、平成ゴジラのVSシリーズが1995年の『ゴジラVSデストロイア』にて一旦完結していた。その隙間は、東宝の平成モスラ三部作、大映(徳間書店)の平成ガメラ三部作(『GODZILLA』の時点では最終作未公開)が埋めており、いずれもヒットを飛ばしている。怪獣王の再登場を待ち望む声の高まりを受けつつの、満を持してのハリウッド版ゴジラの登場であった。

本作は1994年頃公開予定であったが、ヤン・デ・ボン監督(代表作『スピード』)の降板によるスケジュール遅延が発生。VSシリーズの続行が決定することとなった。
そもそもVSシリーズは、ハリウッドによる本作の製作・公開の当初予定に併せて、『ゴジラVSメカゴジラ』で完結する予定であった。しかし、上述のような理由により、『ゴジラVSスペースゴジラ』が製作され、「さらば、ゴジラ」こと『ゴジラVSデストロイア』による終幕となったのである。

なお、本作はその企画当初よりゴタゴタのあった作品でもある。一例としては、トライスターピクチャーズによる"ゴジラ製作権を完全に買い取り、東宝は今後ゴジラを製作しない"という破廉恥で厚顔無恥極まりない条件提示により、契約交渉が難航した。
また、最終的に監督となったローランド・エメリッヒも、本作製作に乗り気でない……ひどく消極的……要するに不満であったと吐露しており、最初から最後まで揉め事の尽きない企画であった。
これら諸問題や、ゴジラのビジュアル等様々な要素のおかげで、現在でも語り継がれる作品となった。


【作品感想】
X星人「やっぱりマグロ食ってるような奴はダメだな」(演:北原一輝)

ローランド・エメリッヒ監督の手掛けたハリウッド版『GODZILLA』は、「外国でヒットした作品は、巨大資本をつぎ込んで作り直し、アメリカナイズする」というハリウッド流の作り方をしっかりと反映した、いかにもハリウッドらしい大作です。

ゴジラのデザインはガラリと変えて、トカゲから正当進化・巨大化したらこうなるというビジュアルに。
俊敏な動きで、摩天楼を縦横無尽に駆け回り、ビルを突き抜け大穴を開けたり、マディソン・スクエア・ガーデンに大量の卵を産み付けたり、マグロ食ったり、となにかと忙しいゴジラです。
批判的意見が目立つ本作ですが、かなり理知的かつ不思議な愛嬌を持つゴジラ像は本作最大のポイントであり、最大の魅力でもあります。
また、フランス対外治安総局の諜報員のフィリップ(演:ジャン・レノ)の口から語られる"アメリカ人像"(例:兵士に化けるときはクチャクチャガムを噛む)は、外国人監督ならではの視点であり、ハリウッド式のアメリカアピールとは異なるので、面白いです。『インディペンデンス・デイ』で、マチズモ溢れるコテコテのパワー・オブ・アメリカを描くことで、アメリカ人の心をくすぐったエメリッヒ監督の、見事な掌返しではないでしょうか。

ゴジラ映画としては、失敗作という世間一般の評価に概ね賛同するところでありますが、巨大怪獣のモンスターパニックとしては、普通に面白い作品と感じますし、上述のような「アメリカ人ってさ、こんな感じじゃん?アメリカ社会の弱肉強食的側面も、なんかねぇ」という揶揄する姿勢も面白いです。

何よりも、本作の最大の功績としては、ニューヨークの摩天楼を駆け回る怪獣の姿を見せてくれたことでしょう。
ギャレス・エドワーズ版はまさしくゴジラであったことと、サイズがデカすぎて街が積み木の玩具同然のオブジェクトと化しておりますし、破壊・蹂躙の方向がミニマム&コンパクトだった本作にしかない魅力と言って良いと思います。

ついでに言うと、『ゴジラFinal Wars』を楽しむ上でも、本作は欠かせないということも忘れてはいけませんね。

「田中友幸氏の思い出に捧げる」
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