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大人は判ってくれないのRのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
4.5
人生で初めてフランス映画と意識して見たフランス映画はこれだった気がする。大学の頃だった。この作品全体に漂う空気感がすごく新鮮で、当時大変に魅了された記憶がある。その後何度か見たけど、今見ても初めて見たときの瑞々しさがまったく失われない。不思議な映画。パパとママにまともに相手にされずに育ったパリの小学生アントワーヌは、学校ではいたずらっ子と叱られ、まともな友だちもおらず、学校をサボっては親と教師にバレて怒られたりしてる。そんな毎日の生活のなかで自分の居場所を見つけることができず、街をひたすらさまよい歩き、映画を見ることだけが好き。ある時、彼の状況がちょっとマシになるかなーって気配が漂い始めたときに、またドスッとブロウを食らって、その結果ある小悪さをしてしまい、誰からも見放され、遂には逃げ出し、流れ流されて行きついた果てまでを描いている。ポンポンとテンポの良い語り口が気持ちよく、ユーモアを交えつつ、ところどころ痛みがヒリつく感じが、切なくもあり、懐かしくもあり。出てくる大人たちはみんは自分の都合だけで言葉を発し、行動し、愛も優しさもうわべのノリだけ。大人ですらできてないのに、ガキンチョが自分を理性でコントロールできるはずがない。なのに、子どもであるってだけで、その歪みの打撃をボコボコと一身に食らわなければならない。しかもその仕組みがまだ分からないから、ただ耐えるか、逃げるかしかできない。その様子が逞しく、同時に哀しい。そして、感動で胸を激しく揺さぶられる最高のラストショット! 走って走って走って走って走って……行き着いた果てで…あのまなざし! どれだけ逃げ続けようと、人は自分の人生から逃げることだけは、絶対にできない。現実と向き合うしかない。アントワーヌが振り返った先に、我々が存在している。それは、僕たちが生きている現実であり、僕たちは、死ぬまでこの世界で生きていかなければならない。だから、向き合って、戦おう、どれだけボコボコにされても。何度見ても全身がビリビリ来る。素晴らしい。感動。ときに、あの訳のわからんぐるぐる回る乗り物はいったい何。今回一緒に目が回って具合が悪くなって一時停止させられたあの乗り物は一体。あと、アントワーヌくん、久々に見るとすごくイケメンだった。ジャンピエールレオはこの時代がいちばんイケメンなんじゃないか。
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