ろ

紅の豚のろのレビュー・感想・評価

紅の豚(1992年製作の映画)
5.0

「行きたいところはどこへでも行くさ」

賞金稼ぎのポルコは今日も深紅の飛行艇とともに空賊を追っていた。
そんなある日、整備のためミラノへ向かうポルコを、アメリカからやってきた空賊の用心棒カーチスが追撃する。

馴染みの工房ピッコロ社は戦争の煽りを受け、男たちは出稼ぎに。
艇の設計は17歳の少女フィオが、各パーツの修理はピッコロの親族が総出で手伝ってくれる。
大盛りのスパゲティにワイン、食べ物や仕事への感謝の祈り。
無駄口を叩かず、スカートをはためかせながら黙々と働く、逞しい女たち。
若い女に俺の艇を任すものか、女どもに修理なんかできるのかとぼやいていたポルコだが、その働きぶりを、ゆりかごを揺らしながら黙って見守る。彼の足下にタバコの吸い殻がいくつも落ちている。

艇のローンを完済したポルコに銀行員が「愛国国債を買いませんか」と持ち掛けると、「そんなことは人間同士でやってくれ」と受け流す。
国民をスポンサーに飛び続けるんだと悪態を吐く戦友に「俺は俺の稼ぎでしか飛ばねぇよ」と答える。
戦争のために飛ぶのか、自由のために飛ぶのか。
同じ飛ぶにしても、ポルコはその目的を大事にしていた。彼は飛ぶことを心から愛していたのだ。

ポルコを待ち続けるホテルの支配人、鼻っ柱の強い女の子。
飛行艇で対決していたはずがいつのまにか地上に降り立ち、素手で勝負する。
西部劇の男らしさと潔さが凝縮された、粋で大人なアニメーション映画でした。


(2020年7月7日・11日 DVD鑑賞)
ろ