いの

半分の月がのぼる空のいののレビュー・感想・評価

半分の月がのぼる空(2009年製作の映画)
4.3
上弦の月


映画館で観て以来の2度目の鑑賞。泣ける映画が良いとは限らず、というかむしろその逆といったことも多いけど、映画館でとにかくひたすら泣いた映画でしかもとても好きな映画。もう10年以上経っているから観るのはちょっと勇気が要る。今みてフツーに感じてしまうくらいなら、記憶のなかで格別な方がいい。


きわめて個人的に好きな映画。きわめて個人的、としか言いようがない。どの映画だってわたしは客観的になれるはずもないけれど、この映画に対して客観的になろうとしたら、スコアは大幅に下がると思う。初鑑賞のときにはもう病気を抱えていて医師からもう言われていたから、どうしたって客観的にはなれんよ。池松壮亮と忽那汐里は、この映画を撮っていた間は、ホントにお互い惹かれ合っていたと、そう断言してしまいたいくらい、切なくて可愛らしくていじらしくてキュート。病院の屋上、洗濯物が風に吹かれているなかで、暗唱できるくらい読み込んでいる銀河鉄道の夜の文章を、交互に言い合う場面から、もう涙腺が崩壊してしまって、そこからはもうだめです涙が止まらないから困ってしまう。これは厨二映画じゃなくてきっと高二映画。再鑑賞では、初鑑賞のときには気にもとめなかった突っ込みどころがたくさんあったことに気づいてしまったけど、でもそれでもいい。高校生なんてそもそもめちゃくちゃなんだし、やりたい放題やればいいよ。〝半分の月〟というタイトルが象徴しているように、控えめな映画でもあるし、三重弁はあったかいし、やっぱり今観てもとても好きな映画だった。女の子が、「わたしの言うことには何でも従って」と言うときにはすでに、この男の子はわたしのワガママをヤレヤレと思いながらも聞き入れてくれるはずだという確信がある。きっとそう。バイクのニケツがずっと心に残ってたし、今観ても好きだった。
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