茜

トレインスポッティングの茜のレビュー・感想・評価

トレインスポッティング(1996年製作の映画)
5.0
10代の頃に狂ったように観てた本作。
便器の中に入り込むシーンや禁断症状のシーン等の斬新な映像と、それを惹き立てるオシャンティーな音楽に当時はバリバリ影響されたもんです。
Underworldの「Born Slippy」なんか今でもたまにふと聴きたくなるくらい。

あれから10年以上経って改めて観ると、やはり映画としてのセンスは変わらず好きであるものの、レントンや仲間達のダメっぷりに愕然とする。
赤ん坊が死んでもなお薬を打ち続ける姿に、もはや嫌悪を通り越して情けなくすらなる。
真っ当な社会人になろうとしているレントンの元に押し掛ける仲間達や、結局彼らに引っ張られるレントンに苛立ちを感じる。
それでもこの映画を嫌いになれないし、寧ろ今観ても変わらず大好きだと思えた。

それはやっぱり10代の頃に自分がこの映画に影響を受けたという事実そのもので、自分の中にも「彼ら」が存在していたから。
彼らの抱えるどうしようもない気持ちを満たしてくれる存在がヘロインなら、10代の自分にとってのそれはカルト的な音楽や映画だった。
対象となるものは大きく異なれど、きっと根底にあるものは似ていて、だから若い頃の自分は凄くレントン達に共鳴してしまったんだと思う。
大人になってこの映画を観て、彼らに対して情けなさを感じる自分は間違った大人に育っていないと思う反面、心の片隅にはまだ10代の自分が残っていて、それでも彼らに愛着を覚えてしまう。
久しぶりにこの映画を観て、そんな大人になりきれていない自分が何だか嬉しかったし、妙なノスタルジーを掻き立てられた。
思い出補正も大いにあるけれど、やはり大好きな映画のひとつ。

改めて観て気付いたけれど、この映画すごく「時計仕掛けのオレンジ」に影響を受けてるんだな。
バーのシーンなんて完璧にオマージュだったし、映像の撮り方もキューブリックにそっくりだと思う所が幾つかあった。
「時計仕掛けのオレンジ」も10代の頃に影響を受けた映画の一つなので、そう考えるとこの映画にハマったのも自然な流れだったのかと思えて腑に落ちた。
茜