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われらの恋に雨が降るのhorahukiのレビュー・感想・評価

われらの恋に雨が降る(1946年製作の映画)
4.1
「私には関係ない!」それが問題の核心

めちゃくちゃ面白い!!ベルイマンの監督2作目にあたる作品で、出所したばかりの男と(恐らく)売春婦の女が、過去を振り切り無一文から真っ当な生活を手にしようと足掻く姿と、悉くそれを拒絶し排除しようとする社会側の反発を胸糞感たっぷりに描くメロドラマ。

失業者で住居もない2人が家を借り、職も得ることで安定を勝ち取り、結婚へと人生のステップを移そうとする。順調に再スタートをきったかに見えたのも束の間、彼らの過去が「今」を食い散らかそうと存在感を増していく。社会に順応し得ない2人が家主、雇用主、聖職者、警察等々のブルジョワ階級の作り出した強大で偽善的で無関心な壁の前で足掻き、問答無用で過去へと突き返されるのが辛い。

前作の『危機』が興行的にズタボロだったため、監督人生終わりムードの中、才能を認めてくれたプロダクションで作る機会を得たのが本作らしい。当時フィルムノワールの監督たちの羽振りが良く、その中でもマイケルカーティス作品を研究していた…とベルイマンは語っているようで、本作がノワール風なのは、当然好きもあったんだろうけど、興行的なトラウマの反動なのかな…とか勝手に思った。

ジジイがいきなり現れ、観客に向かって「映画を黙ってご覧ください」みたいな感じで第四の壁破ってくるんだけど、無関心で冷酷で貪欲な地獄のような現実の中に一筋の光をもたらす天使として作中にすら影響を及ぼし始めるメタ的な演出も面白い。

独創性に欠けるということでベルイマンの中ではそれほど評価されていない作品ではあるけれど、地獄の中で「生きる」ということを描く上での普遍を徹底的に突きつけ、頼りなく朧げな「傘」ひとつへと帰結させる本作は、ライトでは有りながらもグッとくるものがあった。というか、このレベルで評価されないとかベルイマン凄すぎるわ😂
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