ハル

恋人たちの食卓のハルのレビュー・感想・評価

恋人たちの食卓(1994年製作の映画)
4.0
舞台は台湾。郊外の古い家に父と三姉妹が住んでいる。普段は忙しい彼らも、日曜の夕方には食事を共にする決まりになっている。食卓には父が作った食べきれないほどの料理が並ぶが、娘たちは渋々付き合っているフシがある。父はかつて一流ホテルのシェフだったこともあり、腕には自信があるようだが、老境に差し掛かり、味覚が衰え始めていた。

渡る世間は鬼ばかり、あるいは、小津安二郎作品の台湾版といったところか。非常に丁寧に作られている。

ストーリーとしては、一人、また一人と家族が家を出ていく展開だが、小津作品のような軟着陸を期待していると予想を裏切られる。事実、予想は見事に裏切られた。終盤のどんでん返しには驚きを通り越して呆れたが、いずれにしても、思い出の詰まった家から住人が次々といなくなっていくのは切なかった。ラストカットは小津作品を彷彿とさせる。父親と娘が笠智衆と岩下志麻に重なって見えた。

また、この映画は食を楽しむ作品でもある。冒頭から豪勢な料理が視界を覆い尽くして、空腹を刺激してくれる。その破壊力たるや、同じく飯テロ映画の傑作、「バベットの晩餐会」と双璧をなすレベルである。腹が減ってどうしようもない時には見ない方がいい。
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