ある夫妻が惨殺され、犯人が逮捕される。弁護士は彼の時折豹変する態度などを見て、精神鑑定を依頼したところ多重人格と診断される。精神科医の助手はその結果に疑念を抱き再鑑定を申し出るのだが…という話。
森田芳光監督作品。
精神喪失状態にあるものの罪を軽減する刑法第39条を取り扱った作品。ただでさえ重いテーマなのに、暗くくすんだ画面と役者陣の怪しげな演技も加わり、非常に重々しい空気を醸し出している。39条と少年法の双方に問題意識を投げかけていて、犯人の真意が判明したあとは何とも言えない焦燥感を抱いてしまった。
堤真一の多重人格者の演技は必見。他にも国家権力側の人物を演じた樹木希林や江守徹、岸部一徳らの怪演が見もの。
個人的には鈴木京香演じる精神科医助手が、上司である精神科医の鑑定に異議を唱え再鑑定を申し出たのに当の上司は「意見が違うこともある。好きにしなさい」と優しく許容するところに感銘を受けた。
ストーリーとしては衝撃的だが、警察がよく調べれば犯人の手口と動機もすぐ分かったのでは？とか鈴木京香の鑑定は全然学術的ではないよね？とかツッコミどころは多いけど、中々の野心作だった。
