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祇園の姉妹の小のレビュー・感想・評価

祇園の姉妹(1936年製作の映画)
4.1
角川シネマ新宿で開催の溝口健二・増村保造映画祭─変貌する女たち─にて鑑賞。

『浪華悲歌』と並ぶ溝口監督の戦前作の傑作。主演は『浪華悲歌』と同じく山田五十鈴さん。『浪華悲歌』の主人公の女性は辛い経験を経て内面の強さに磨きをかけていく感じなのだけれど、本作の主人公・おもちゃは、すでに尖った強さを持つゴリゴリの近代的な女性。

祇園の芸妓姉妹の姉の梅吉と妹のおもちゃ。良い旦那に恵まれていない彼女たちは、質素に暮らしている。梅吉には取り立てて不満はないものの、女学校出のおもちゃは不満タラタラで、「男なんて自分たち芸妓の敵。だまして金を巻き上げるなんて、当然でしょ」みたいな。

梅吉は世間体第一主義で、男に尽くす、男にとって都合の良い存在。対するおもちゃは功利的で、男勝り、男にとって恐るべき存在。

ある日、梅吉のもとに馴染みの旦那が駆け込んでくる。店がつぶれ、家を飛び出してきたという。快く居候させる梅吉に、おもしろくないおもちゃは、この旦那を追い出し、梅吉にもっと甲斐性のある旦那を世話しようとする一方、自身も男を利用するが…。

男に尽くしても、男を利用しても、結局は男に、社会に踏みにじられる女性たち、みたいな感じになってしまうのだけれど、おもちゃはめげる様子が全くない。それどころか、女性を虐げる男性社会をぶっ壊すまで絶対負けないぞ、というくらいの気概すら感じる。

そして、社会は確かに梅吉からおもちゃへと変わってきた。まだ完ぺきではないかもしれないけど、おもちゃの執念が実った気がしてくる。

とすれば、『浪華悲歌』と『祇園の姉妹』が公開された頃だったのですね、何の取り柄もない自分のような「無所属系男子」にとっての暗黒時代へと向かう転換点は。歴史が動く瞬間を垣間見たかも。
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