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ノロイのhorahukiのレビュー・感想・評価

ノロイ(2005年製作の映画)
4.2
言い方が全て!

とにかく内容云々よりも「言い方」が大事だということを身にしみて実感させられるJホラー。普通に下手に出たのに問答無用で怒鳴られる初見殺し。沸点低すぎ!最後まで見てもどんな「言い方」が正解だったのかはさっぱりわかんないけど、主人公のオッサンがコミュ力お化けだったら万事解決してた感ある!

怪奇現象を取材検証するドキュメンタリーを制作していたオッサンが、失踪直前に残した『ノロイ』という作品。それ見せるんで各自検証してみて!といった体裁のモキュメンタリー。

モキュメンタリーだから全部嘘なんだけど、現実と虚構の匙加減が恐ろしいほど緻密に掌握されてるから、嘘なの?本当なの?な次元を超えたエンターテインメントに仕上がってる。見る側の姿勢として、どうせ嘘だろ🤥と思って斜に構えて見なくても良いというか。『コワすぎ!』のような茶化しを使わずに、あくまでも正攻法でモキュメンタリーであること自体をエンターテインメントに昇華させてるっていうか。これってひとつの到達点なんじゃないの?って思った。

失踪した主人公が直前にこんな調査やってましたよっていう「事実」を事実らしく本作は淡々と積み上げるだけ。派手なことは一切行わずにあったことをあったまま。「隣の人が頭おかしい」と訴える依頼者に聞き込み→確かに頭おかしいわ!ってことを確認するだけで特に何も起こらない→その後依頼者が死んで、頭おかしい人も引っ越したことが後でわかる。そんな「変」なことが単発でいくつか起こっていくだけで、主人公も観客も観測できるのはそれぞれの結果だけ。それにより、全く見えてこない「過程」が秘匿としてのオカルトを生み、その薄らと見えてくる共通項が、現実離れした陰謀論なり何なりを容易く信じてしまう人間の心理を刺激することで観客を引き込んでいく。

リアリティのあるタレントたちによるそれっぽいバラエティ番組をいくつか挿入することで現実味を増し、日常的に聞き流してしまうような関連性のない報道の数々が、ばら撒かれる陰謀論的オカルトと結びつくことで裏に潜む一本の糸を炙り出す。

創作だからこその手際の良さなんだけど、それって唱える人の都合の良いように創作された陰謀論と構造的には同じなわけで、創作だからこそなし得る(不自然なまでに)全てが同一ベクトルを向いた(かのように思われる)事象の連なりが真相としての空想的オカルトを「現実」と結びつけ始め、最終的にはマジもんの現実として観客の心の中に着地させる。

タレント使ったり報道使ったり、洗脳の手順を実践してんじゃないの?コレ。ほんと凄いと思う。メジャー作品も良いけど、白石監督には今のJホラーを背負って立って欲しいな!
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