茜

恋愛睡眠のすすめの茜のレビュー・感想・評価

恋愛睡眠のすすめ(2006年製作の映画)
3.2
全然知らなかったけど、この監督さんって元々MVを制作してた人だったんですね。
ダフト・パンクのAround The Worldもこの人の作品だと知って、この映画に凄く興味が沸いた。

タイトルやジャケットからして、キュートでポップなラブコメみたいなの想像してしまいがちだけど、実際は何だかジメジメした話。
ステファンは見た目は大人でも中身は小学生みたいで、そもそも自分が子供の頃に使っていた部屋を当時そのままのレイアウトで使うこと自体、彼の成長停滞を物語ってる気がした。
夢の中のシーンで登場する段ボールやセロファンで出来た手作り感満載の工作的な美術も、彼の幼い内面を表現してるのかな。

ただ彼がそんな幼い大人で、尚且つ陰キャな妄想青年だからこそ、私には共感してグッときてしまう所も多々あった。
確かにステファンの行動は狂気じみてるしストーカー的なんだけど、ステファニーと一緒にオブジェを作る時の楽しそうな顔とか、彼女に「70歳になったら結婚して」っていう大胆なのか控えめなのか分からない言葉選びもピュアでむず痒い。

誰でも妄想を楽しんでしまう事ってあると思うけど、私の場合は大人になるにつれて日々に追われたり、そもそも妄想する気力すら失ってしまっていたりする。
この映画のラストはハッピーなのかバッドなのかも解釈が異なるだろうし、そもそもテーマ自体が現実的に考えると笑えないし心にズシリと来るものがある。
それでもこの映画を観ていると、心が童心に帰るような、誰かを好きになってウキウキと幸せな妄想に浸る少年少女のような純粋な気持ちを思い出すような、不思議な感情が沸いてくるから面白い。
茜