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ゴーストワールドのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

ゴーストワールド(2001年製作の映画)
2.0
《能天気さがあまりに危うい、何者にもなれない者への処方箋》

この度初鑑賞となったティーン映画の名作だが、まず客入りがスゴかった。しかもミニシアターでこんなに大勢の人と観たのは『コワすぎ!』最新作以来?あれも謎なバズりだったけど、今作の自然な笑いが聞こえてくる雰囲気はメッチャ良かったなー。

そんなファンに支えられた本作、端的に言えばポストモダン世代による世の中の暴走をポストモダン世代時代とも呼べるゼロ年代の特権が産み出した処方箋と思える。とにかくあの社会性を漠然とさせた空間に、代わりに個性が爆発した人らが過ごしており、社会に順応しきれてないけど世界が回ってる感じ。SNSによる断絶が始まると、また別の"ポスト"ポストモダン化していくことを考えると知らない人に声掛けまくる行動力、、ではなく当たり前のように返事する方のノリが異様に見える。映画自体もそういうノリになっていることが、毒舌コメディとしてちゃんと成り立ってるんでヤバい。

観る前はさぞ、キャピキャピしたお話と思ったらそうじゃなかった。主演二人が通り過ぎる人を端からディスりまくり、アンニュイな殻に閉じこもって世の中カッたりぃーというエモい精神ビンビン映画だったのだ。大体、正反対なタイプの2人がなんでつるんでんのか?の最大の疑問は置いとくにして、痛々しい意識高い系なのをスーパーエモいガールズとして映画は擁護してしまう。社会に順応しきれなさをこれほどメンヘラでなくエモいに振り切った点、もう目が離せなくなる。
そんなこんなでブシェミと共依存になってくも、目的と動機が合っていなかったため不幸な末路を辿ってしまう。ただブシェミ側は結果として自信を得られた出会いとなり一瞬の尊さを紡ぎ出すが、例のどこへ向かうかわからないバスエンディングにはやられた。
あれのおかげで街の外側いわば社会の枠に嵌っていくことをゴーストワールドと解釈できれば、街の内側をゴーストワールドと呼べる両義的タイトルが完成するのだから一気にウェルメイドさを感じた。

また、本作にパックされた青春の痛みには心揺さぶられる一方、それ自体が危険だぞと遠回しに伝わる映画だった。もちろんあのラストが帳尻になってるにしても、この極度に能天気な作劇は反面教師のように危なく、思ってた以上にヤバい映画で正直舌を巻いた。今の時代では絶対に不可能なギャグの数々とか、やりすぎよと笑ったが思えばテリーギリアムの作風もそんなだもんな。
前半の出オチギャグ的な挿話続きは苦手ではあったが、エモい人物の大発明で帳消しになったな。
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