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ヒア アフターのMOCOのレビュー・感想・評価

ヒア アフター(2010年製作の映画)
2.0
「あなたを知っている、霊能者だ」(マーカス)
「違う、人違いだ」(ジョージ)
「ジョージ・ロネガン」
「知らないよ」
「ジョージでしょ、話を聞いて」
「誰かと間違えている」
「サイトで見た。霊能者でしょ」
「・・・どういうつもりだ、霊に関わるのはもうやめた消えてくれ」


 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の大津波の被害への配慮から日本では急遽上映が打ち切られた映画です。
 販売ディスクも通常よりも遅れることとなり、当初は輸入版のディスクしか流通しなかったクリント・イーストウッド監督作品です。私も輸入版Blu-ray を購入した口です。
 

 フランスの女性ジャーナリストのマリー・ルレ(セシル・ドゥ・フランス)は、恋人と訪れていた東南アジアのリゾート地で、一人で買い物に出た街頭で津波に飲み込まれてしまいます。
 流木や押し流される自動車に押し潰されそうになりながらもなんとか溺れないように泳いだのですが、衣服が鉄筋に絡まり水中深くへ巻き込まれやっとのおもいで水面へ顔を出したとき後頭部に漂流物の直撃を受けて水没して臨死を体験します。
 地元の人間の人工呼吸を受けて生還するものの臨死体験中の世界が頭から離れなくなり、通常の生活バランスが保てなくなり人気キャスターの座は降板となり、社会的地位も失ってしまいます。
 休職中に取材と自己体験から書き上げた臨死に関する書籍がTV制作スタッフの間で問題になったのですが、フランスで発売されることになり販売促進のために訪れたブックフェアのサイン会場で書籍の購入者ジョージにサインを書きます。

 ロンドンに住む無口な少年マーカスは、双子の兄ジェイソンを突然の交通事故で亡くしてしまい薬物中毒の母と子供の3人の生活はとたんに崩壊し、母親は更生施設に入ることになり、マーカスは里親に引き取られます。
 自分よりもしっかりしていたジェイソンに生活のペースを任せていたマーカスはうまく生活ができず、兄が戻ってくることを望んでネットで霊能者を探し回るのですが、訪ねた霊能者は全て胡散臭い偽物でした。マーカスは霊能者を訪ねる途中の地下鉄でジェイソンに助けられる
不思議な体験をします。

 1年たっても心を開かない上に黙って家のお金を持ち出した(霊能者に会うための資金)マーカスに手を焼く里親夫婦は、マーカスの前に預かっていた少年が今は立派な青年になり働いている姿を見せようと、マーカスを連れて青年が勤めている警備会社の勤務先を訪ねることにします。一家はロンドンのブックフェアの会場を訪れます。マーカスはそこで偶然ネットで見たジョージを見つけます。

 アメリカ人のジョージ(マット・デイモン)は、かつて体験した臨死から死者と会話する霊能力を持ってしまい、依頼を受けて霊と接触して生活費を稼いでいたのですが、普通の生活も普通の人間関係も築くことができないために、自らの意思で霊との接触を避ける生活を求めるのですが、ジョージの兄は話を聞き流し、自分の利益のためにその力を利用しようとします。

 ジョージは工員となり真面目に3年間勤務するのですが、ある日会社都合のリストラにあってしまい「ジョージの生活のために」と勝手に霊との交信をするオフィスの開設をした兄に置き手紙を残し町を後にします。

 ジョージは敬愛する作家ディケンズの書斎を見学するためにロンドンを訪れ、偶然当日ブックフェアで行われている読書会のポスターを目にします。
 会場で「死と死後の世界の話」を朗読する女性の声を耳にしたジョージは本にサインをしてもらい、受けとるときに触れた彼女の手から彼女の臨死体験の映像をイメージします。
 お互いに何かを感じるのですが、ジョージは当然少年から「待って、あなたを知っている、霊能者だ」と話しかけられ、その場から逃げ出してしまいます。

 ジョージは宿泊するホテルの前で、夜になってもジョージを待っている少年(マーカス)を部屋に招くと少年の手を握り、ジェイソンの言葉を伝えます。
 その夜、ジョージはマーカスからの電話を受けます「あなたの好きなあの女の人が泊まっているホテルは・・・。僕、出版社に電話で聞いたんだ。本の感想を話したいって・・・」
 そしてジョージはマリーを訪ねて・・・。


 意図しない経験から救われない人生を歩む3人はロンドンのブックフェアで廻り合い、マーカスはジョージの霊能力で救われ、ジョージとマリーの人生は明るい予感が・・。

 クリント・イーストウッド監督作品だけに、津波の映像とストーリー展開は良いのですが、何かの結論まで行き着かず、観賞者の想像に任せます・・・という、中途半端な終わり方が残念です。
 2011年の東北地方太平洋沖地震の影響で打ち切られた背景がありクリント・イーストウッド監督作品であることもあまり知られていない作品なのかもしれません。
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