R

ヒア アフターのRのレビュー・感想・評価

ヒア アフター(2010年製作の映画)
5.0
イーストウッドの映画で一番最初に稲妻のような衝撃を受けたのがチェンジリング、そして、最初に恋に落ちたのがこの映画だった。久しぶりに2回目見てみた。最高です。あらすじを読むと誰しもが、は? スピリチュアル系のあやしいお話ですか?って思うはず。ボクも見る前はそう思ってた。けど見ると全然ちがう。こともないんやけど、違うんす。それがメインのテーマではない。死に囚われていた3人が死を乗り越えて生に向き合うまでを描いた話なのです。けど生に向き合う前に、深く深く死と向き合う。だから、ただ単に作業のように日々を生きてる、フツーの人たちとはわけが違う。主要人物は3人。一人目はフランスの女性ジャーナリスト、マリー。彼女は東南アジアで旅行中に突然の津波に襲われる。これが冒頭のシーンなんやけどすごい迫力。津波が轟音と共に海からぐんぐん浜の市場に近づいてくる。何が起こってるのか分からず、何だ?何だ?と海の方向を見つめる人々、それが津波だ!とわかった時にはすでに遅い。すさまじい怒濤が容赦なく次々と人々を呑み込んでいく。これはホントに身の凍る恐ろしい恐ろしいシーン。そこで臨死体験をするマリー。以来死の際に見たヴィジョンが頭から離れなくなる。二人目は、ヘロイン中毒の母を持つマーカス。双子の兄のジェイスは母のために薬を買いに行ったあと、最悪な交通事故に遭って死んでしまう。その後マーカスは養子に取られ、塞ぎこんでしまう。突然この世から消えた兄と話したくて話したくてたまらない。3人目は霊媒の能力を持っているジョージ。以前はその能力を使った仕事をしていたけど、そのせいでふつうの人生が歩めず、ずっと孤独、故にそれは才能ではなくて呪いだと語る青年。そりゃそうだ。死とは何なのか、それがわからないまま人の死に毎日のように向き合わなければならなかったのだ。そんな彼はディケンズの小説が好きで、料理教室に通うようになるのだが…。という流れで、それぞれフランス、イギリス、アメリカを舞台にして展開する。もうこの時点で相当変わった話やなと、思われるかもしれないが、イーストウッドの手腕が驚くべきマジックを起こしていて、何もかもがまったく無理なく、むしろスピリチュアルな世界が存在しているのが当たり前であるかのようにちゃんと感じさせてくれる。その正体は分からないのだけれどね。で、先ほど述べたように、それがメインのテーマにはなってくなくて、それぞれが死を経験することで、人生の方向性が大きく、ネガティヴに変化してしまった、というのがテーマなのだ。ほぼ全編、心がしんしん痛くなるような哀切が描かれるのだが、そのすべてがものすごくあたたかい人間的な優しいベールに包み込まれていて、見てて最高に心地いい。何度も何度も涙が溢れてくる。それがピークに達するのが、双子エピソードのクライマックス。こらえていた涙が堰を切って流れ出すと、もう止められない。ジョージの瞳の変化にも震えるほど感動。何て素晴らしいシーンだろう。こんなに胸を締めつけるシーンまじで見たことない。ホントに最後の最後だけ、えっ、そのショットいりますか?ってのがあったけど、ご愛嬌やね、マットデーモン君も男子ですのでな笑 しゃーない。ほんとこの人いい演技するよね。いつまでたっても少年みたいな純朴さが消えない。最高の男優だ。とてもへヴィーな内容であるのに、見終わったあとの感想としては、スウィートでロマンチックでディープで、心が洗われて人生に対して一層ワクワクできるような、とてもステキな映画だったなぁと思うこと間違いなし! イーストウッドの作曲した音楽も最高です! 何たる才能! 惚れ惚れします。これは何度も繰り返し見たい! 最後にどーでもいい話やけど、フランス人の彼氏、毛むくじゃらなのにすごいイケメン。ああいう見た目の人は、裸でベッドでふつうに寝てるだけでエロいんだなーと学んだ。寝てるだけでエロいってすごいことだよ。
R

R