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アキラ AKIRAのRのレビュー・感想・評価

アキラ AKIRA(1988年製作の映画)
4.5
2014年の11月に以下のレビューを書いていました。

「すーごすぎるー!!!何たる世界観!ディテールへの驚異的こだわりがしびれるほどクール!ツルツルしたCGアニメでは出せない武骨な荒々しさ。たまらん!音楽がまた素晴らしい。打楽器ベース、ドンドコドンドコ、エスニックな歌唱、プリミティブな血が騒ぐ! 声を貼り合わせて異様なリズムでホラーなムードを生む妙な音楽もあったり by芸能山城組。中盤から後半はホラー級にゾッとする描写の数々。えっそいつ殺すの⁈的驚きもあり、ヴァイオレンス描写、ぐちゃぐちゃハルシネーション描写ともに見事。サディスティック! すさまじい力を手に入れたのにコントロールできなくなるというテーマは今日ますますリアルだし、それを大人に止められない子どものけんかに還元してるのもとても示唆的。主人公ふたりが最高!大傑作!」

で、この度、東京オリンピック延期記念にひさびさに見てみましたので、追加でもうちょっと書き加えておきます。

以前何回か見たときはとんでもなく興奮したものだが、今回はそんなでもなかったかなー。けどやっぱ面白いです。1988年、第三次世界大戦が勃発。すさまじいパワーの衝撃に呑み込まれて一瞬で崩壊する東京が静寂のなかで描かれ、でっかくタイトルが出てくるオープニングに、まずシビれる。そして、そこから、暴走族の金田が仲間たちとバイクを大都会に走らせ敵チームとぶつかり合うシーンと、老人のようにシワシワの顔をした少年が何やら機動隊に追い詰められてるらしいシーンとが、クロスして展開。暴走するバイクが光の尾を描きながら高速移動し、背後に摩天楼が輝くの、めちゃくちゃカッコいい! やがてその二者が出会ったとき、金田の仲間の鉄雄がシワシワ少年と共に機動隊のヘリに連れ去られていく。鉄雄は研究所に軟禁され、その特殊な脳波パターンのために、国家機密アキラ計画に利用されることになる。そのなかで鉄雄は謎のすさまじいパワーを手に入れるのだが、副作用のような幻覚に苦しみ始める。幻覚の演出がこれまた素晴らしく、音なく内臓にゅるりんや、巨大なぬいぐるみの襲来など、その恐ろしさとシュールな悪夢感は、見てるこっちがクラクラくるほど。一方、主人公の金田は対国家の革命組織の女にナンパ心を惹かれ、彼らと行動を共にし始めるのだが……という流れ。とにかく全編、刺激的な映像とハイな民族音楽みたいなので溢れかえってて、そちらばかりに気を取られすぎると、話を追いかけるのに苦労します。よって、ある程度あらすじを知ったうえで見るか、2回あまり間をおかずに見たほうがいいような気がします。ストーリーはいろんな人のいろんな感情や思惑が入り組んでいてとても複雑、だけど、とにかく猛烈な勢いがすごいので、ひと息つく間なくゴリゴリ押されまくる。終盤になると次から次に大迫力の大スペクタクルが大展開! ぐおーーーーーんと宇宙にまで飛び出たり、ぐにゅぐにゅがぶりぶりでぎゅーっぱしゃん!!! す…すごい……そして、あまりにもミステリアスなアキラ計画の全貌が少しずつ明らかになっていく。その点に関しては、全宇宙と生命の謎みたいなものがベースになってて、宇宙誕生、生命誕生、進化などを押し進めてきた生命の持つ根源的エネルギーみたいなお話になってって、ほほー、最終どうなるんや! ってなったところで、さてここからほんのちょびっとネタバレになりますが、あれ、なんか、ウヤムヤ?って感じで終わってしまう。もう一歩先まで行ってほしかったなーというのが正直な所感。やけど、まぁでも全体としてはたいへん興味深く、まさに公開当時、核兵器の脅威があきらかに世界を覆っていたときのザイトガイストが、よく表れてるのではないかな、と思った。核兵器は、現在のところ、使用価値を失った無用の長物に成り果て、その恐怖を肌で感じる、ということがなくなってしまったが、かといって核兵器の脅威が完全に消えてなくなったわけではない、という微妙に麻痺した感覚だと思うので、そんな時代にはじめてアキラを見る人はどう感じるのだろう、と気になるところ。ボク個人として、本作でいちばん面白いなと思う点は、結局この世界を滅ぼし得るのは、一見シリアスで複雑そうに見えて、畢竟未成熟なガキンチョの恨みとなんら変わりのない、「あいつムカつく!」っていうネガティブな感情である、っていうのを寓話的に描いた点やと思います。面白いです。また見たい。
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