日本のアニメーションとしても、近未来を描いた映画としても当時は非常にエポックメイキングだったと思います。
81年マッドマックス2 、 82年ブレードランナー 、84年1984、ターミネーター、 85年未来世紀ブラジル、
とのちのディストピア映画に影響を与える作品が80年代に大量に産出される中、まさに80年代ディストピア映画を締めくくるかのような本作。
そういう意味では、AKIRAの提示した未来のイメージ、デザインは今の日本の作品に少なからず、継承され続けていると思う。
まず、あまりにもレベルの高い作画に度肝を抜かれる。ヌルッヌルのセル画に近未来のビルディングの繊細な色彩、それでいてこのスケール感、基本のアニメーションクオリティはあげるとキリがなく、アニメーターが過労死してんじゃないかってくらい思えてくる。
金田がバイクをスライディングする際の顔のクローズアップから奥にバイクが後退するカットはのちに数々のアニメでマネされたし、バイクのランプの光が空気中に後を引いていく描写だったり、いちいち反応したくなるディテールのカッコよさ満載。
そしてアフレコではなく、プレスコで制作されたことによる自然な会話、というか、あまりにも流れるような動きの数々に気持ち悪さを覚える。
つまり絵のキャラがアニメ的ではなく、人間的な動きや口の動きからくる不気味さ。(それくらいに見たことない映像だったから)
物語は非常に入り組んで、哲学深い内容。
監督の思想や哲学がここまで押し出された造りは2001年宇宙の旅風の感覚に近い(漫画自体がそうなのですが)。
こういう観客にアンサーを求めるような、難解な造りが、AKIRAのSF作品としての人々を惹きつける魅力だし、日本のSFとして新たな領域に踏み込んだ作品。
AKIRAが原子力のメタファーになっているのも、日本人として興味深い。
この唯一無二の世界観が海外でも、支持されている理由の一つだと思います。
しかし2001年やブレードランナーに比べると、少々押し付けがましく、厨二感が強い展開な幼稚な所は否めないですが。
そして金田達暴走族チームのキャラの魅力が本作の絶大な人気の一つ。
金田や鉄雄に会いたいがために何度も見返すようなもん。
「何だよ、おめーは。葬式帰りか?」
「理科の時間じゃねェんだよ」
「やっとモーターのコイルがあったまってきたところだぜ」
「さん"を付けろよ、デコスケ野郎ぉ」
もう名言、名ゼリフのオンパレード。
ある種コマンドー的な、盛り上がり抜群の使い回し。
地上波で放送されようもんなら、全編SNSでバルス祭り。
さらにこれを煽るようなケチャを多様した音楽がホントに最高すぎる。
近未来映画は音楽が素晴らしい作品が多いですが、これも一つの発明だと思う。
サントラ聴くだけで全部持ってかれる。
2001年的なハードSFにコマンドーのようなオタク盛り上がりの融合がここまでカルトに押し上げたんだと感じました。
何よりこの作品がすべて絵なんて本当に信じられない。