horahuki

欲望のあいまいな対象のhorahukiのレビュー・感想・評価

欲望のあいまいな対象(1977年製作の映画)
4.4
それは何に対する欲望か…?

金持ちのオッサンが10代の美少女メイド・コンチータに、金の力にものを言わせてイケナイ関係を迫りまくるブラックエロコメディ。なかなかヤレずにブチ切れるオッサンのキモさが凄いのだけど、金を出せるだけ出させてギリギリのところでうまく躱し続けるコンチータさんのテクニックが圧巻!強い!!

何ヶ月か前にレンタルしたのだけど再生不良で途中までしか見られなかったやつ。めちゃくちゃ面白くてサイコーだった!やっぱりブニュエル大好き!ちなみにこれが遺作らしい。

見てる時は、コンチータ役の女優さん雰囲気変えたり演じ分けたりするのうまいなぁ…程度にしか思ってなかったんだけど、どうやら2人で一役を演じてたらしい。登場人物を覚えるのが苦手な私には当然見破れるわけもなく、ずっと同一人物だと思って見てた😅

『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』みたいに目的が悉く叶わない金持ちの滑稽さをとことんまでに見せつけてくるんだけど、そこには女性を支配したいという欲求なり、それが当然だと考える思考なりの旧来的で父権的な価値観が根底にあり、『エル』にも見られたようなそれらへの皮肉めいたものが見え隠れしている。そしてその皮肉は財で心を買おうとする資本家へと向けられる。

『黄金時代』や『この庭に死す』なんかでも物質的な財でもって着飾ることへの嫌悪感を明るみにしてたけれど、本作でも立派な財の外観と矮小な内面の対比を終始貫いている。ネズミとハエはこの辺りなんじゃないかな。そんでコンチータを2人が演じているのは内面的な二面性の表象とも捉えられるし、人が変わっても気づかないほどにコンチータという存在を見ていないオッサンの内面の醜さを嘲笑うかのような意図も感じ取れる。まあ私も別人だってわかんなかったんだけどね🤣🤣

でも結局は愛なんて口ばっかりで若くて美人で魔性で処女な女の子を従順なしもべ?ペット?みたく手懐けたいだけなんやろね。もちろん金なり暴力なりのペラッペラな力でもって。女とつきあうなら棍棒を忘れるなとか冒頭で言ってたし…😅

だからこの前の『エル』でもそうだったみたいに女性に対する恐怖みたいなのはやっぱり根本にあるんだと思う。支配欲と恐怖の感情から、女を服従させようとする男と真の愛を求める女という決して相容れない性差的なものを「もう無理無理!めんどくさ!」みたいにテロに任せちゃうお手上げ状態な心境を表現したのかな〜。遺作ってことはそれがブニュエルの結論??頭陀袋はこのあたりの表象??まあ何か良くわかんないけど、すっごい面白かった!
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