馬井太郎

プライドと偏見の馬井太郎のレビュー・感想・評価

プライドと偏見(2005年製作の映画)
4.0
介護保険料を二重に徴収されている私のような老人には、難解な映画である。何が、というと、名前と顔や、人間関係が途中でわからなくなってしまうのだ。ある時は、姉、妹、叔父、甥、そして、またある時は、名前そのもので呼ばれると、はて? それは、誰のことだったかな?と考え、迷ってしまう。
女優陣の美貌に酔っぱらっているから、なおさらなのだ。たしか、彼女、ロザムンド・パイクだよな、あれ? キャリー・マリガンもいるじゃん。などとやってると、字幕読みがおろそかになる。老人病は、若い人たちには、わかってもらえない。
映画は、「役者・ストーリー・ヌケ」だ、と教えられたことがある。「ヌケ」とは、映像の符牒。役者については、言わずもがな、ことさらに映像が素晴らしい! カメラワークと色彩だ。
俳優の輪郭に逆光が映え、陽光に輝く新緑・紅葉。いまにも唇を重ねるかに見えるその数センチの隙間に、朝陽が眩しく邪魔をする。
ラストシーン、ドナルド・サザーランドのほくそ笑みがいいなあ。介護保険料を払う、私のような老人にしか、その気持ちはわからないぞ。