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甘い生活のKKMXのレビュー・感想・評価

甘い生活(1959年製作の映画)
4.4
 いや〜、かなりインパクトのあるガーエーでした。これリアルタイムで観た人にとってはとんでもないボムだったのでは、と思います。
 3時間の長尺で『無』を観せられるわけですからね。タイトルも皮肉だし、破壊力抜群だったでしょう。

 主人公マルチェロはイケメンのタブロイド記者。本当は文学を志していたが、ダメな人たちとの交流で堕落し、刹那的な日々を送ってます。マルチェロにはメンヘラ彼女がおり、別れられず共依存みたいになっています。
 マルチェロはモテるので、金持ちの令嬢マダレーナとはセフレ関係です。また、アメリカからやってきた美人女優シルビアともイイ仲になります。
 とはいえ、まったく心は満たされないマルチェロ。そんな時、精神的に豊かな生活を送っているように見えるスタイネルと友人になります。マルチェロはスタイネルを目標にして、意味ある生活を送ろうとするが…というストーリーです。


 とにかく本作は、虚無・虚無・虚無のオンパレード!登場人物たちは基本まったく満たされず、意味を見いだせず、内面的に悲惨な人生を送っております。パーティーが1ミリも楽しくなさそうなのが凄まじい。パーティーシーンは常に息苦しいです。
 マルチェロとメンヘラ彼女の関係もホント行き詰まっていて、お互い傷つけ合うことしかできないのに別れられないのが地獄だね!内面が空っぽなもの同士、しがみつき合うしかないんだろうなぁ…
 マダレーナの金持ち虚無もキツかった。『フォックスキャッチャー』のデュポンに通じるような印象。物理的に満たされ過ぎていると大事なモノが解らなくなり、精神的に彷徨いがちになるのかも。
 そして、一見満たされた生活を送っているスタイネル氏も内面は荒廃している。目標があったが辿り着けず挫折している印象で、その問題をクリアできずに生きている様子が伝わりました。終盤に訪れるスタイネル氏をめぐる事件は、それでも流石にインパクトが強くビックリしました。まぁでも、さもありなん、ってとこでしょうか…

 個人的に本作でもっとも印象的だったシーンは、前半に描かれたキリスト教のインチキ奇跡についてです。奇跡を起こせる子どもをメディアがはやしたて、奇跡を起こす場面を演出たっぷりに撮るのですが、大雨に見舞われて、奇跡をガチで望んでいた病人が死ぬという内容でした。
 これは本作の根底にある問題を描いているように感じました。神への不敬というか、神の形骸化というか、信仰心の不在が強く伝わってきます。
 自分を超えた大いなる力についての想像力を失うと、傲慢になるのではないかと感じます。本作で描かれたインチキ奇跡はまさに想像力を失い、傲慢になった人類の蛮行だと感じました。神を利用してカネ稼ぎをするわけですから。


 本作で描かれる人々の多くは傲慢で愚かです。しかし、不思議とフェリーニは彼らを糾弾しているようには思えなかった。肯定もしていないが、断罪もしていない。皮肉っていますが、非難対象ではないように思えたのです。
 フェリーニにはそんな人たちを受容して抱えるわけではないものの、「まぁ〜、そうだな、人間だもんな!ガハハ!」みたいな、在るのをただ認めるみたいなノリがあるように思えるのですよ。明確な解を提示せず、幸も不幸もまるっと提示する、みたいな感じを受けます。『道』とか『アマルコルド』とかにも感じたことです。
(ジュリエッタでは強引に解を提示しており、フェデリコの焦りが感じられた)

 ヤスミン師匠やホドロフスキー師匠は明確な解を提示する作家だと感じています。ベルイマンは解がわからずに彷徨い、その都度の研究結果を作品化する印象です。
 フェリーニは、ハナから解を提示するつもりがないような印象です。そこには、『人間だから解はない!』みたいな哲学があるのでは、なんて推察します。

 カネがあって、エロい女子が身近にいてモテモテになれば、堕落しても仕方がない!人間だもの。そこから抜け出せないのも人間だ。ラストに、彼岸にいる女の子(おそらく脱堕落の象徴)の声を聞こうとして聞けないのも人間だし、まぁ聞こうとする姿勢があるのも人間だ!
 こう考えると、フェリーニってガハハ感のあるみつをみたいだな。

 好みの感じは今んとこ、師匠・ヤスミン>フェリーニ>>>ベルイマンってとこかな。


 演者について。本作では俺好みの美女が2人出演しており、何よりそれが最高でした!2人とも出演時間が少し短く、その点はやや不満でしたが。

 ひとりは、ポスターにも描かれているシルビア演じるアニタ・エクバーグ。シルビアはアメリカ人の女優で、イタリアにプロモーションか何かで来た人です。出番は短く、内面が描かれる前に退場してしまうので残念でした。
 アニタはとにかくルックスがエロい!パイ乙がデカすぎて色気がToo Much!! そのため惜しいことにやや品位が伝わらない。ただ、ゴージャスな金髪は息を飲むほど美しく、髪フェチの自分にとっては最高に眼福でした。塔の上で風に煽られ、帽子が飛ばされて豊かな金髪が露わになるシーンはめっちゃセクシーだった!く〜💕

 もうひとりは金持ち虚無美女マダレーナを演じたアヌーク・エーメ。ジャック・ドゥミの『ローラ』では主演しており、その時から美女だなぁと思ってましたが、今回の憂愁な役回りですっかりファンに。夏目雅子に匹敵する超気品ある美女です。可憐さと高貴な美しさが最上のところで融合している感じで、いや〜尊いです💕
 『男と女』をスルーしたのは失敗だったな。あ、でもアップリンククラウドの見放題でアヌーク主演の『モンパルナスの灯』が観れるので、今度観よ〜っと。


【追記】
 『8 1/2』を観て、本作の人間肯定はフェイクであるとの結論に達しました。いくつになっても甘かねぇッッ!
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