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冬の華のクレセントのレビュー・感想・評価

冬の華(1978年製作の映画)
4.0
脚本家の倉本聰 が高倉健のために書いたという作品。滑り出しが篠田正浩の乾いた花に酷似していたが、そんなことはどうでもよかった。もう何回も見ているが、どういうわけか健さんが藤田進演じる組頭と、しみじみとこんな会話(少しづつ欠けてきたが)をする場面が頭から離れない。

「頭(かしら)、そろそろ足洗おうかと考えているです。」
「そうか、それがいいかもなぁ。」
「もう斬った、張ったの時代はごめんだよ。銭(ぜに)金(かね)の問題じゃあねえよ。俺はどうなっても構わねえ。しかし、息子の道郎(みちお)だけが心配なんだ。あいつは一本気だからなぁ。そこでお前に頼みたいことがある。あいつの面倒を見てやってほしいんだ。お前だけは信頼しているんだよ。」それを聞いた健さんはこころよく引き受けたのだった。

なんでもない台詞(せりふ)を時々思い返すことがある。これもそのひとつ。藤田進はこの長台詞(ながぜりふ)を波止場の彼方を見ながら振り返るようにつぶやく。どこか、哀愁に漂う老人の姿を見てしまったようだ。
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