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ハリー・ポッターとアズカバンの囚人のshxtpieのレビュー・感想・評価

3.5
もしかして、『ハリー・ポッター』の映画シリーズの最高傑作? 興行収入はシリーズの最低らしいけれど……。

クリス・コロンバスの前二作から、あきらかに映画の文法が変わった。フランチャイズだからそこまで変わらないと思っていたから、驚いた。アルフォンソ・キュアロン、すごい。コロンバスの二作は、どっしりとした重量感のある、あの頃のハリウッド映画。対して、キュアロンの『アズカバンの囚人』は、古臭さも重さもない、現代映画の軽やかな手触り。それが、子どもから大人へとずいぶん成長してきた三人のティーンエイジャー感(エマ・ワトソンは完全にエマ・ワトソンになっている)にも合っている。特に『アズカバンの囚人』では、ハリーたちが制服を着ている時間が短く、フディやジーンズを纏ってラフな格好をしているので、余計に。

あいかわらずプロットを義務のように消化していく感じは否めないし、とにかく細部や設定や要素が入りくんでいるので、かなりの部分が捨象され、省略されている(細かいところは忘れてしまった。小説を読み直さないと……)。説明不足でもある。とはいえ、前半の寮生活での馬鹿騒ぎのようなシーンに見られる、余白を際立たせるディレクションがいい。重要なことに、カメラワークは実に縦横無尽で、イマジネーションに富んでいる。ロングショットも見事。なにより、質感がかなり今っぽい。撮影はマイケル・セレシン。それに、うるさくてしつこいスコアがあまり目立たなくなった。

『アズカバンの囚人』って、本当に内容を忘れまくっていたのだけれど、時間SFじゃん(やたらと時計や振り子を映す、象徴主義的な演出)。子どもの頃は『アズカバンの囚人』なSFだなんて、考えたこともなかった。謎解き、推理、探偵ものだった前二作からいきなりSFへいくという、J・K・ローリングの荒わざ。また、ディメンターやヒッポグリフなんかは、やけにギレルモ・デル・トロっぽさが強い。それにしても、ゲイリー・オールドマン、デイビッド・シューリス、ティモシー・スポールと英国の役者たちが魅力的で、さすがだと感じた。
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