140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ターミネーター4の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ターミネーター4(2009年製作の映画)
3.4
【哲学より娯楽】

ジェームズ・キャメロンが世に放った「ターミネーター」シリーズ。それは1作目でサラ・コナーをカイル・リースが守り抜きサラ・コナーが生きる意味を得たところで人類の勝利は確定している。詰まるところの旧約聖書。本シリーズはジョン・コナーを救世主として描く新約聖書のようなもので、哲学的でなく娯楽的な戦争アクションとなっている。ジョン・コナーがカイル・リースを見つけるまでの話だが、人類サイドが機械軍団に対抗しうるためのフェアに試合をさせるためのキャラクターが何か複雑化させている。「ターミネーター」は人間讃歌であると私は考えているもので、人間が人間として機械軍団を倒すというシンプルな構図で良くて、合成着色料で美味しく見せようとしなくて良い。

ワンカットで見せるヘリの墜落シーンや巨大なターミネーターの造形と下からのカメラワーク、そしてモトターミネーターのチェイスなどアクションに関してはキレ味良く頭にプラグインさせるが、人間讃歌に水を差す成分はハッキリいらなかった。シュワルツェネッガーのT-800のCGリメイクは、股間が煙で隠れる鉄のお色気精神にサムズアップしたいのだが、冒頭のアクションに対して終盤は息切れをしてしまっている。

どうにもこの新約聖書の娯楽的な映像化は、アクションのアイデアと造形という長所を獲得しながら人間味としての失敗をしている。

ちなみにシュワルツェネッガー氏が家族と本作を鑑賞し、子供たちが「シリーズ最高」と、当の本人のシリーズを差し置いて賞賛したことから本作に批判的なスタンスであるという人間味ある背景も加味され、哲学より娯楽を優先する人類の姿を象徴している。