Jaya

東京物語のJayaのネタバレレビュー・内容・結末

東京物語(1953年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

尾道の老夫婦が子どもたちを訪ねて東京見物するお話。尾道の家は島だとばかり勘違いしてました。

1カットの美しさが尋常じゃない。ほぼカメラは動かず人物は真正面から。俳優陣もハマり方が凄く演技の巧劣は問題ではない。周吉の表情が特に素晴らしく、紀子の細かい感情の表出も素晴らしい。幸一だけはキャラが弱かったような。

平凡なお話ながら、その平凡さの中の細かな機微からドラマを生み出す技量が途轍もなかったです。

登場人物に悪人は一人もおらず、嫌なヤツすら出てこない。各人がそれぞれの事情に沿った心情を見せてくれるのみ。紀子の他人であるがゆえの親しさ。各人の絶妙過ぎる距離感の活写に心抉られるのは、自らの既視感ゆえなのでしょうか?

年齢によっても感じることが違いそうでした。昔はただ美しさに圧倒されましたが、今は一人ひとりの表情に感動。

相当にミニマルながら、そのミニマルさを一切感じさせず、家族像を軸に人間関係の機微を余すところなく描き出した傑作でした。
Jaya

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