茜

狂った一頁の茜のレビュー・感想・評価

狂った一頁(1926年製作の映画)
4.4
原作は川端康成、制作年は大正15年のモノクロ無声映画。
そんな昔の映画が令和の時代に綺麗な状態で観れるだけでも素晴らしいのに、そのうえ舞台が精神病院って余計にそそられる。

自分のせいで精神を病んだ妻が入院している精神病院で小間使いとして働く男のお話。
現実と空想が入り混じった展開は一見難解ではあるけど、お話の流れは筋が通ってて意外とストレート。

無声映画だから台詞は勿論ないし、字幕もない。
でも斬新な実験的映像と耳に突き刺さるような音楽、俳優達の豊かな演技で見事に惹き込まれる。
激しいドラミングに合わせて院内で踊り狂う女と、それに触発された患者達がお祭り状態で騒ぎだすシーンが一番印象的だったな。
このドラムが圧倒的に凄くて、これ叩いてる人どんな方なんだろうかと調べてみたけどロクに情報出て来ない…。

この時代の人々が、とにかく斬新な映像技術を色々試して面白い映画を作ってみようという意欲がひしひしと伝わってくる。
歴史的にも貴重だし、このアバンギャルドな世界観もたまらなく素敵で何度でも観たくなる。
残念ながら国内では未ディスク化だけど、海外版は普通に売ってるみたいで欲しくなった。
茜