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ボーン・アイデンティティーのbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
ジェイソン・ボーン シリーズ第1作

2000年代を代表するアクション映画シリーズの、記念すべき第1作です。
主演はマット・ディモン、"アクションスター"の変遷を強く感じるキャスティングと言って、差し支えないでしょう。

80年代、アクションスターとは、シルヴェスター・スタローンから始まり、アーノルド・シュワルツェネッガー、チャック・ノリス等に代表される「男臭い筋肉ダルマがマシンガンを片手でぶっ放す」、要するに"筋肉アクションスター"の時代でした。

しかし90年代、潮流がハッキリと変わりました。
大きくわけて、2つの事情があると思っています。

一つは、SFXやVFX等の技術の発展により"コンピュータによる映像製作"が容易となってきたこと。

一つは、効率的な栄養摂取・筋肉トレーニングのノウハウが普及し、"魅せる身体を作る技術"を駆使して、たちまちのうちに筋肉アクションスターに変貌させることが容易になってきたこと。

これにより、細身のイケメン俳優も、素晴らしいアクションをこなし、細マッチョで見るからにカッコいい姿をスクリーンに映し出せるようになってきました。

そして2000年代。
筋肉アクションスターがドル箱とされた時代は幕を下ろします。
前述のSFXやVFXに加え、CGも多用されるようになりました。
ワイヤーアクションの輸入も、大きな影響を与えましたね。
公開は99年ですが、『マトリックス』はその影響を受けて作られた最たるものだと思います。

そんな2000年代のアクションにおいて、新たなシリーズ展開をした大ヒットアクションが、記憶喪失のエージェント、ジェイソン・ボーンを主人公とするボーンシリーズ。

マット・ディモンは、決して筋肉モリモリなマチズモ全開男ではありません。
また、本作もCGをバリバリ使うような映画ではありません。
しかし、巧みなカメラワークと演出を駆使することで、アクション映画として抜群の仕上がりに。
これにより、マット・ディモン=アクションスターの位置を手に入れ、その後の『グリーン・ゾーン』『エリジウム』『グレート・ウォール』等へと繋がっていったわけです。


本作には、私が大好きな俳優のクライヴ・オーウェンが、ボーンを狙う殺し屋"教授"として登場、寒々しい草原で、ボーンに疑問と多くの示唆を与え死んでいく、大変味のある敵役を演じました。
ハリウッドデビューを飾る作品が、本作で良かったなぁ。
私が彼を認識したのも、初めて本作を見た時で、以来ずっとファンです。

話が逸れましたが、新時代アクション映画及びアクションスターの潮流は、その後フルCGへと以降、役者はグリーンバックの前に立ち、全身にマーカーのついたタイツを着て、虚空を眺めて演技する(これは別に今に始まったことではありませんが)時代へと突入していきました。

この先、アクション映画、アクションスターは、時代と共にどのように変化していくのか、期待と不安を抱えつつ、楽しんでいきたいところです。
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