Ricola

卵のRicolaのレビュー・感想・評価

(2007年製作の映画)
3.7
母の死をきっかけにイスタンブールから故郷へ戻ってきた詩人の男。
彼は母の遺言をもとに旅に出る…。


三部作で、主人公の男の人生を遡っていく物語だという。
こちらはその一作目で、謎の多いさくひだった。
しかしその謎というのは、三部作を通して観ると伏線であるのだろう。

誕生の起源とも言える卵が割れたり、羊を生贄にするなど、生と死が繰り返される。

他にも、日常のあまり注目しない瞬間を切り取ったショットの美しさに息を呑む。
ただ人が2人隣り合わせで座っているだけでも、背景の色合いと相まって美しい。
それも飾り立てることなく、そのまま表現される。

主人公の何気ない優しさに心を掴まれた。
道中でジャムなどの食料を無料でもらったおばあさんたちに、そっと現金を置いているところなど。

鮮やかな色使いと絵の具を薄めたような淡い色使いのメリハリも効いている。


彼らの旅が終わったと同時に、観客の旅は始まるというのが面白い。
Ricola

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