なべ

アジョシのなべのレビュー・感想・評価

アジョシ(2010年製作の映画)
3.9
 シネマート新宿であの「アジョシ」がブースト上映されるというので観てきた。アジョシとは「おじさん」のこと。韓国ドラマを見慣れた人なら「アジョッシー」は耳が覚えてるよね。

 おお、どこか懐かしいテイスト。2010年の韓国映画はまだ邦画っぽさが残ってる。今はもう日本映画なんてとっくに追い抜いてずっと先を走ってるけど。
 雑居ビルで質屋をやってる寡黙な主人公テシク。人と関わりを持つのを避けてるような立ち振る舞いがややクサめだけど、実は元国家情報院の特殊工作員ってところが出たー!って感じ。この生きることに疲れ切った男をウォンビンが演じていて、オトコマエでシブくてカッコいい。
 そんな孤独な男がわずかに心を通わせるのがお隣さんの母娘。娘ソミはアジョッシ、アジョッシとテシクにやたら懐いてくる。母親の方は組織のシャブを強奪するくらい後先考えないクソ馬鹿野郎。もちろんすぐにとっつかまって臓器売買のパーツと化すのだが、このバカ母のせいでソミも子供用臓器として拉致られるのね。これを奪還せんとテシクが孤軍奮闘するって話。最近の作品だと、「ただ悪より救いたまえ」なんかとよく似てる。「ただ悪〜」と比べたら、アクションも胸糞加減も生ぬるいけど、洗練されすぎた今のアクションよりある意味現実的でぼくは嫌いじゃない。粗めのアクションはウォンビンのセクシーさと相性が良く、これはこれでアリかなと。ブーストされたサウンドがキリッと締まった解像度の高い音で、今どきの韓国映画のサウンドと比べても遜色なかったおかげかも。
 ただ、物語の終わらせ方がなあ。昨今の韓国映画の印象的なエンディングに比べて、アジョシのクロージングはやや難あり。かなり古くさいのだ。ソミを抱きしめた瞬間にストップモーションて。余韻、もうちょっと余韻に浸りたいぞ。思わず「太陽にほえろ」か!ってツッコミそうになったわ。
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