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ソイレント・グリーンのbackpackerのレビュー・感想・評価

ソイレント・グリーン(1973年製作の映画)
4.5
「SOYLENT GREEN is……」
ハリー・ハリソンのSF小説、『人間がいっぱい』を原作にした、ディストピア映画の金字塔。未来を予言したSF作品です。
これが1973年の映画なんですから、本当に恐ろしい。身震いするほどです。ラストシーンは台詞共に強く記憶に残ります。

ーーー【あらすじ】ーーー
2022年、人口4000万都市のニューヨーク。
街は薄汚れ、電気は自家発電、食べ物はなく、科学の力で汚染しつくされた未来だ。
人口は爆発し、人々はソイレント社の作る合成食糧『ソイレントグリーン』や『イエロー・ソイレント』、『ソイレントパン』で飢えを凌ぐ日々。
そんな中、ある一人の富豪(とてつもない格差社会の中で、富裕層と一般層には天と地の差がある生活水準を生きている)が殺されたことで、主人公の刑事ソーンが調査に乗り出すことになった。
しかし、この事件には『ソイレントグリーン』に関する重大な秘密が隠されており……。
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極めてリアルな、起こりうる未来を描いた傑作SF映画ですが、細部まで実に作り込んでいます。
行き過ぎた人口増加によって地球温暖化が進み、人々は常に汗をかき、薄汚いです。人々の覇気が無い演技もピッタリ。
崩壊した世界は富裕層と貧困層の2層しかなく、警察組織は汚職が通常状態。
本当に、こんな未来ありそうだなぁと思えます。

特に見応えがあるシーンは、ソイレントグリーン不足から生じた暴動の鎮圧シーン。
ショベルカーのような重機でもって、人間を掬い上げることで鎮圧します。尊厳なぞ欠片も感じさせない非人道的で過酷な世界観をよく表しています。人情とかないんか?

もちろん、死体をゴミ収集車で集めたり、処理工場に運んだりといったシーンも、サラッと描かれる事が逆に強いインパクトを与えます。
「この世界の当たり前がここにある」というこたが、強く感じられます。

そして最後の、血に濡れた手のクロースアップと、慟哭……。

この映画で、哀愁漂う老人を演じたエドワード・G・ロビンソンは、この時既に耳が殆ど聞こえなかったそうです。それでも、素晴らしい演技を見せてくれます。
彼の遺作となった本作ですが、作中に彼が死ぬシーンがあります。その時、チャールトン・ヘストンは彼と共演した作品を思い出しつつ、彼との思い出に涙していたんだとか。泣ける。『十戒』とかを思い出してたのかな……。


ディストピア映画は数多にありますが、本作はその中でも随一と感じています。
出演者達の演技といい、世界観といい、謎解きとサスペンス性といい、まさしく傑作です。
またディストピア映画を色々と見たくなりました。
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