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白い肌の異常な夜のhorahukiのレビュー・感想・評価

白い肌の異常な夜(1971年製作の映画)
3.6
最強にゲスいクリントイーストウッド!
最新作『運び屋』で俳優業に復帰したイーストウッドやけど老いてもイケメン過ぎやろ!
というわけで顔はイケメンだけど中身は最強にゲスい変態イーストウッドを拝めると噂の本作を見てみました。

南北戦争を背景に、南軍側に位置する女子学園の中にやってきた北軍のイケメンが平穏をかき乱し、大きな波紋をもたらす変形型ホームインベージョンスリラー。

幼女から叔母様まで、女子だらけの花園に足を怪我して動けない超絶イケメンが投入されるというエロゲのネタになりそうな変態的シチュエーション。しかもそのイケメンが男らしさの権化的イメージを持つクリントイーストウッドというのが面白い。

南北戦争の脅威から隔絶された女子だけの世界。そこにあるのは平穏と抑圧という表と裏。長い戦争のせいで仮初めの平穏を保つために「女」を忘れた彼女たちにとってイーストウッドの存在は劇薬以外の何者でもない。

課された義務という建前の中に蠢く欲望。彼女たちの中にある建前と欲望の支配関係が次第に逆転していくドラマが纏う淫靡な空気感が、首の皮一枚で繋がっている頼りない「建前というベール」の向こう側で今にも爆発する寸前のピリピリとした緊張感を生み出し、また映画という彼方側の出来事だからこその野次馬的ワクワク感が彼女たちの一挙手一投足に対する観客の興味を深める。

モノローグで語られる彼女たちの本音が「言われんでもわかるわ」的なわざとらしさはあるにしても、「その考えで合ってるよ」という中間発表的な答え合わせにもなっているし、何よりも実際に言葉にするからこそ伝わってくる直接的な本音に嫌悪感が上乗せされドロドロしたドラマがより生々しく感じた。

女性は男性からの侵略の危機に常に晒されているのであり、その中で男性に臆せずに強かに生きる女性が本作では強く描かれていた。黒人解放を巡った南北の対立だけでなく、女性と男性の間の決して相容れない考え・価値観の対立が人種を超えたところに存在し、表面上の言動により秘匿された深層部分にあるものは希望や善意なのではなく、極めて利己的で真っ黒なものだという現実を男女ともに突きつけられる。

その秘匿された深層を言動に乗せて映像として表現した演出がうまいのかどうかはわかんないけど、とにかく面白くて笑った。こいつゲス過ぎやろ…(笑)女性側については、前述の通りモノローグを多用するわかりやすさもあるんだけど、本作の肝となる狂気の感情については彼女たちの明確な意図を露わにせず、ひたすらに観客にも隠匿し続ける。そこに深層が読めない女性としての怖さや強かさが描かれているように思った。

南軍である学園に北軍がやってくることを劇中で「北軍のスパイではないか?」と疑惑を露わにしたセリフがあるが、イーストウッドの存在は南北の対立ではなく、本作が強調して描く「男性と女性の対立」関係の中で、女性を崩壊させるためにやってきた男性サイドからのスパイであったのだなと感じた。南北対立の中の男女対立という面白い構造の作品でした。

リメイクは面白いのかな…。
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