たにたに

國民の創生のたにたにのレビュー・感想・評価

國民の創生(1915年製作の映画)
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【人種差別問題を考える】2023年69本目

TSUTAYAディスカスにてレンタル鑑賞。
評点はなし。

はじめに、この映画は白人至上主義団体KKKの正当性を主張してしまっている人種差別的映画であるが、現在にもつながる映画技法を生み出したグリフィスという存在を知る上では貴重な資料といえるという前置きをしておく。

上映反対運動が起きる中でも、本作はニューヨークの多くの市民達に受け入れられた事実があって、それが世間を再び煽動してしまったというグリフィスの戦犯だとしても、アメリカ初の長編映画ということで見ておく価値はある。

1865年に、リンカーンが奴隷解放宣言を出してから、特に南部で奴隷を所有していた白人達の不満がKKKを組織させた。
この非人道的組織は、黒人を見かけたら殺すというとんでもない奴らなのだが、そこには解放された黒人達が逆襲をしてくるのではないかという恐怖というか白人たちの思い込みがある。

本作では北部の政治家の白人娘エルジーと南部の白人ベンの恋愛を描いており、エルジーを南部の黒人ガスが好意を持ち、執拗に追ったことによりエルジーが崖から落ち死亡してしまったことが発起となり、ガスないし黒人達がひどいリンチに合うという物語。
そのときに白人が結成するのが白い覆面を被るKKKだ。つまりこれはKKKをヒーローとして描き出しており、白人達が自分達の正当性をただ主張したいがための愚かな物語なのである。

白人はどこかしおらしく、可愛げに、そして男性は紳士的に描かれて、
黒人の登場人物とはいうと下品に、ずるがしこく描かれる。
白人と黒人の混血男性リンチは大統領候補としてかしこく、良い人間かのように描かれるものの、途中から性格が変わりまるでファシズムかのような様相を見せ始めたりする。
中には白人の味方となる黒人家政婦たちもいるが、これは黒人は白人に従順であることが道徳だと主張しているかのようなのだ。

そして黒人ガス、混血のリンチどちらも白人が黒塗りをして演じているという点において、どうにも愚かさを感じざるをえない。


映画技法としては、クロスカッティングによって二つの出来事を交互に映し出すというスリリングな演出をしている点は目を見張る。

しかし、黒人は悪であるという間違ったステレオタイプを民衆に植え付けてしまった。

作品としては長尺で、無声映画ではあるものの、上記の点を踏まえつつ一見の価値はあります。
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