B5版

ディア・ドクターのB5版のネタバレレビュー・内容・結末

ディア・ドクター(2009年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「蛇イチゴ」、「ゆれる」、そして今作「ディアドクター」。
田舎の人情と湿っけに満ちた人間関係を描かせたら右に出るものはいないんじゃあないか、西川監督。

メッキの最期を悟って逃走する伊野。
偽の医者、偽の診断、偽の神様。
この村には神様みたいな先生がいる、は誰が責任を取る嘘だったんだろうか。
1人の男の一つの嘘を守るために嘘が伝播しバレた後すら続いていく。

反射で起こした善意がたまたま慢性化したことが罪なのか?
真実の後に誰も救わない結末しか迎えないのなら、
神様のいない土地になるこの場所をこの先誰も気にかけることもしないのなら、
嘘を暴くという行為はなんて無駄で無意味な独りよがりなのだろう。

伊野が消えた後、火を落とした様な集落のさまは、正義が仮初の平穏を我が物顔で剥ぎ取る残酷さを物語る。

役者陣もとてもよかった。
主演の笑福亭鶴瓶も良かったが私的ベストは余喜美子さん。
着々と死に向かっている患者を挟み、棒立ちの偽の主役の首根っこを捕まえ有無を言わさぬ眼力でそのまま舞台に連れ戻す演技、痺れました。

一転、ラストだけが不満。
伊野が果たして神さまみたいないい奴なのか詐欺をした悪い奴なのか、それは観賞後それぞれが持ち帰る課題になるはず。
彼は駅の構内で煙のように消えたままであるべきで、何の好罰を受けてはいけないだろうと個人的には思った。
B5版

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