ryosuke

かぶりつき人生のryosukeのレビュー・感想・評価

かぶりつき人生(1968年製作の映画)
3.7
シネスコサイズの伸びやかなロングショットを織り交ぜたカット構成と、威勢のいい関西弁の応酬と共にテキパキ展開していく(特に前半は)テンポが気持ち良い。
劇伴が台詞に合わせてブツ切れになったりするのは和製ヌーヴェルヴァーグという感じだな。画面手前と奥で同じ音量の会話が交互に繰り広げられるのも面白い。「音のフォーカス送り」とでも言うべきだろうか。
事故シーンでの切れ味抜群のストップモーション、ワンカット内で変化する照明等もそうだが、挑戦的な演出を用いつつも娯楽性も損なわれておらず、興行的に大失敗して神代も干されたというのは何故だろうという感じ。まあ途中からちょっとだけダレてくる印象はあるけど。
ヒロインの処遇について画面奥で話し合う夫婦と、画面手前にずんずん近づいて大映しになる殿岡ハツエのショットも、少し不穏な雰囲気でその後の展開を予告しているようで印象的。
暗闇の中でただ一人スポットライトを浴びる母、傘を拒否して力強く歩く娘の描写は、共に男に依存せず強く独り立ちすることが求められる女の逞しさが端的に表れている。
ピンク映画を見に来る客は裸にしか興味ないみたいな愚痴を、ピンク映画を見に来ている観客に浴びせるのもメタで面白いな。
何故かマンション上階の子供を映し出すラストカットも良いのだが、あれ、最後の方にはお母さんの出番は無いんだとは思った。
刺されても「ええ調子」「運が向いてきた」と語り、さっき自分を刺したばかりの犯人に商売の話を持ち掛ける娘の姿の中に、母譲りの強さが見えたからそれで良いのかな。
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